私の家の話
ニーハオ、ニホンコンです。
家業の手伝いで実家に帰っておりました。
同時期、オットさんもシンガポール。
子どもち初の3人でたくましく生きてくれWeekend。
やや心配なのでお隣さんに「何かあったらよろしくNe」
とセコム係に任命。そんな週末。
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今年創立100周年を迎える実家「菖蒲会(あやめかい)」演奏会のお手伝い。
初の演奏会は大正11年(1922年)だったとか。
父と姉、そして姉の娘っこであり私の姪にあたる三世代が舞台に立ち、
それ以外の家族はそれぞれの役割でサポートにあたります。
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とはいえ、私なんてお琴はかじる程度、人生のほとんどを中華圏にうつつを抜かし、
今は海の近くでのんきに暮らしてるなど、なかなかのヨソ物感。外様です。
あんまり知ったような口きける立場ではありません。
演奏会当日は、朝の早い時間に家の中を探索。お稽古場の見学。
実家は半分が居住スペース、半分がお稽古場となっており、そこは1枚のドアで
明確に区切られています。父も姉もそこがオンとオフを切り替える場所のように
私も用事がなければ入らない。扉は異世界を隔てる存在みたいなもの。
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しっかりした絨毯とピンとした空気が漂うお稽古場。
かつて、実家の初代ワンコ、のんちゃんは「絶対に入っちゃダメ」と厳しく
言われていたにも関わらず、家族不在の間にしれっとお稽古場の中を歩いてたとか。
私も二足歩行のんちゃんの気分でウロウロする。こうやってコソコソ入って
キョロキョロするのは、のんちゃんか私か、くらいです。外様じゃなくて、犬かよ!
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外国語のチラシは、欧州に演奏旅行に行ったときのもの。
不思議な気分なのだけど、家族なのに写真の中央にいる袴の父と
ドレス姿の姉は、私の中で完全に別世界の違う人。
30年前と変わらないネタの手品やすべらない話でお正月を盛り上げる父や、
最初から最後までビールで乾杯しつづける普段の姉は、そこにはいません。
お琴と三味線の演奏家である二人なのです。
私の家族は、扉の向こうとこちらという、二つの世界と顔を持つ人たちです。
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こちらは姉のお稽古場。部屋はもちろんですが、机の上は聖域。
恐れ多くて近づけない、神棚みたいなものです。
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当日は来場された方の受付や、出演者に届く山ほどのお花の仕分けや
お手伝いの方とオペレーションの確認など、なかなか慌ただしい。
会場の中で演奏を聞けることはほとんどなく、ほぼ外にあるモニターで確認する程度。
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姉と父の2人の演奏だけは、ちょっと見たくて一瞬受付を抜け会場に入ってみる。
私の幼少期は既に父が祖父から受け継ぎ、父の時代でした。その後
父が築いたひとつの時代の中に、当時若かった姉が加わりました。
姉は受け継ぐことを「分厚い紙にゆっくりと色が滲み染まっていく様なもの」
と表現していましたが、私から見た舞台では、二つの色というより、
二座の山が堂々とたたずんでいるように見えました。
それが家族であるのだけど、違う世界の話のようで、でも誇らしく思う
不思議な感覚。
最後は高揚感たっぷりの表情で退場していく観客の皆さんにご挨拶をして
バタバタと片づけを。
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会場のお花をお裾分けしてもらい、大きな花束を抱えて新幹線のホームに。
「『誰?何あの大きな花束』って思われてるんだろうなー」と勝手に
視線を感じ、いえ違うんです私じゃなくて家族なんですよと心の中で
言いながら帰途につく。
ああ、いい演奏会でした。
次は、102年目の春に開かれる予定です。
最後に
あれだけ凛として舞台に立っていた父。終演後に楽屋に行くと
あっという間に普段着のシャツ姿に戻っており
「今度また天ぷらと蕎麦たべるか!」と昨晩の夕飯話に。
よくもまあ、あんな感動の演奏直後に居間みたいな会話できるよな。
ウルトラマンかよ!
それもまた、二つの世界を行き来する、私の家の話です。
3月28日 ニホンコン