ポイント還元期。

おはこんばんちは。飯塚です。

日本を出たのは2012年3月。

もう11年前だなんて自分でも驚きです。

東京での会社員生活に行き詰まりを感じていたのはかなり前から。

震災で人生観変わったり人生変えた人も周りに多く、私自身も定職にはついていながらも脳内は露頭に迷っていた。

よく考えたら今そんなに守りたいものも大切な物もないよね?

携帯に入っている連絡先だってほとんどいらないはず。

だったら全部一度手放してみよう。

退社し、携帯も解約して、貯金を世界旅に遣ってしまおう。

無謀すぎて周りはドン引きしてました。

これが25歳とかならまだしも、当時35歳。

頭ダイジョブ?って、言わないけどだいたい皆さん思っていたのは本人も気づいてました。

実力はないし努力も苦手だけど。

運だけはいい。

自分でも常々思っていたし、周りにもよく言われる。

旅を無事に終え帰るどころか今の夫とも出会い結婚。

たくさんの物を手放して、夫と出会い家族を作ったのかもしれない。

しかし、実は夫と出会う前のイギリス語学学校時代にも

「そうか。こういう人との出会いのために私は日本を離れたのか!」

という忘れ難い瞬間もあったのです。

語学留学の際に気をつけたのは日本人があまりいない地方の語学学校にすること。

留学先の近くは世界的に有名な「チーズレース」の丘が。天気のいい週末にホストファザーが連れて行ってくれました。このチーズの丘の勾配はスギョイのです。

実際、学校には数人の日本人がいたものの、それ以上に韓国人、中国人がアジア勢を占めており。

またイタリアやスペインからは英語を学びそのままイギリスで就職する目的の人達も過半数近くおり、南欧の失業率の高さを目の当たりに。

先生達も

「あなたも仕事探しにきたのね?」

などと言いながら親切に履歴書の添削もやっていたのが印象的。

2012年ロンドンオリンピックの年でした。聖火リレーが街にきました!一瞬のイベントに人だかり。

大人になってからの学び、留学は想像以上に楽しい。

イタリアのサルディーニャ出身のシルビアもその一人。

彼女の話によれば特に職がない南イタリア。

イギリスで英語を身につけて仕事を探すための留学。

彼女の獣医のお兄さんも6年前に渡英し、生計を立てていた。

当時イギリスで獣医師が不足していたらしく、職がないイタリアとスペインから獣医がこぞって渡英した、などという話も教えてくれた。

お兄さんの家の一室を間借りして学校に通いながら職探しをしていた彼女。

語学テストの結果、同じクラスになったシルビア。

クラスではイタリア人男性、ステファノと一緒にムードメーカーで授業を盛り上げ。

自ら語学留学の手配をし学費も自分で払うヨーロッパ勢は30代半ばの人が多く、価値観が合った。

私も数ヶ月とはいえ久々の学生気分がめちゃくちゃ楽しかったのは歳が近い人達が周りにいたから、だと思う。おそらく全員10代後半や20代前半だったら自分だけ浮いてしまって気後れしただろう。

成熟した大人たちがまた学校に通う。

試験に向けて勉強に真摯に向き合い、たまにお酒を飲んだり映画を一緒に見ては「あーでもない。こーでもない」と話が止まらない。

大好きな映画「スパニッシュ・アパートメント」を体験しているみたいじゃないか!?夢のような日々。

「運命の出会い」は恋愛限定ではない。

特にシルビアとは平日夕方や週末はコーヒーを飲みに行ったり彼女の家でご飯を作ったり。

料理好きな彼女の作るラザニア やパスタ、ティラミス、りんごケーキは絶品。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_4752-1200x1600.jpg
シルビア特製ラザニア。奥は私の作ったインゲンの胡麻和えとだし巻き卵。(表紙の写真はシルビア特製パスタ)

料理好きなイタリア人、最強。

彼女も私の作った胡麻和えや卵焼きを気に入ってくれて料理好き同士でよく集まっては食べたり飲んだり。

さりげない気遣いと持ち前の明るさとユーモアで私のホストファミリーも彼女の事が大好きになり、週末には近場のドライブに彼女も連れて行ってくれたり。

「実は子供の頃から日本に憧れていたの」などと告げられたのはずいぶん仲良くなってから。

子供時代に日本のアニメ「キャプテン翼」「ドラゴンボール」「ハイジ」「キャンディキャンディ」を観て育ったという。ジブリ映画もほぼ観つくし、村上春樹も大好き。

週末のドライブに彼女はりんごケーキを持ってくる、と言い、

「おにぎり、作って欲しいな。子供の頃からテレビで見ていたから食べてみたかったの。」

とリクエストが。

ピクニックで夢のおにぎりをかぶりつく姿の記念写真まで撮った。

「ふふふ、お兄ちゃんに写真見せるんだ!羨ましがるわよ!」

なんて満面の笑みだったのもすごく可愛かった。

ある週末、滞在した町で催された音楽フェスでビールを飲みながら音楽の話になり彼女もエミール・クストリッツァが大好きだと知り、音楽の趣味まで合うとは!と興奮してしまった。

あの時のビビビ感。鮮明に今でも覚えている。

異性ならばそれは間違いなく恋に落ちる瞬間。

音楽が鳴り響き花火が上がる。手を取り合って歌って踊ってもちろんキス。ただ、彼女は恋の対象ではなかった。

私は異国で友達を得たのだ。

とても愛おしい瞬間だった。

友に出会えたのに、残念ながら私の滞在期間は限られていた。
お別れが悲しすぎて最後にパブで会った際にはビール飲みながら号泣してしまい、ステファノとシルビアに「Junkina!!Don’t cry!!」と抱擁された。

「世界一周なんて羨ましいわ。私もいつかしてみたい。また会いましょう。ずっと連絡を取り合おうね」

再会。

そのあとはfacebookのメッセンジャーで連絡が続いた。
私が未来の夫と出会った時もその話はしていたし、旅を終えて日本に住まずにイギリスの隣り、アイルランドに住む、と伝えるととても喜んでくれた。

そして2014年2月、アイルランドの結婚式にも来てくれたのだ。

イタリア人のステファノと当時アムステルダムに住む韓国人のジョンミンも駆けつけてくれたのはとても嬉しかった。

ただ、結婚式では私の家族や他の友人達もいて二人でゆっくり話す時間はあまりなく。

その埋め合わせ、というよりシルビアやイギリス滞在時のホストファミリーにどうしても会いたくなり結婚式の2か月後にイギリスに一人で行ったのが最後の再会。

語学学校時代のイタリアンレストランのウェイトレスから彼女のキャリアは飛躍。元々イタリア語教師の資格もあったシルビア。元来話せるスペイン語の他にフランス語の語学指導資格を取得し、語学学校の先生になった。

私は子供達の世話に明け暮れながら、「シルビアに会いたいなぁ」と密かに思い続ける日々。

彼女も私にそんな気持ちを抱いてくれていたのかもしれない。ある日facebookで私の結婚式の写真をシェアしていた。

シルビアがシェアした写真。この写真は9年前です。左からステファノ、ジョンミン、私、シルビア。

みた瞬間に懐かしくて嬉しくて

「I miss you 」とコメントするとすぐに「Me too 」と。

だったら、会おうよ!
と思い連絡してみたら、

「遊びに来てよ!」「うんうん、行く行く!いつにしようか?」

そこからは早かった。

そうだよ。そういう時間が欲しかったんだ。

シルビアと再会の約束を取り付けただけでもエネルギーが湧いてきた。

子供と24時間一緒にいるの、疲れるんです。

また愚痴をぶっちゃけるとだいたいアイルランドの生活において楽しみはあまりない。

田舎暮らしの楽しみは雨がつづいた後に森に行ってキクラゲ採ること。(ネタではない)

子供達の成長が喜びなんです〜、などと母の鏡みたいな事言った方がいいんだろうけど、たまには自分だけの時間や息抜きがないと子供達との孤独な生活に疲れる一方。

一歳半の子は被り物大好き。バッグやカーテン、ブランケットを被っては数十秒静止している。将来は虚無僧か?!

最近は特に家族に八つ当たりみたいに怒鳴りちらす自分がいた。

その後は自己嫌悪がもれなくついてくる。

飲みにも行かない。行きたいレストランもない。ショッピング欲もない。

日本に帰国しても会いたい友達にすらほぼ会えずに逆にストレス溜めてた。

夫はたまに友達と飲みに行ったりセーリングしたりするけど、私はここ数年、自分だけの楽しみ皆無。

以前にも書いたけれど、アイルランドの子持ち親はも旦那さんや両親に子供を預けて休暇を大いに取っている。

コロナが明けた一昨年から友人達がこぞって大人だけでヨーロッパに遊びに行っていたのだ。

ストレス満タン期、だと言葉悪いしポイント還元期ということで。罰は当たらないでしょ。

チケットを取った1月末からはニンジンをぶら下げながら走る馬状態。
あとちょっと、あと少し。我慢。我慢。

子守りをする夫には感謝はするけど罪悪感はない。

ちなみにアイルランドからイギリスに行く、は北海道から東京に行く、みたいな感覚。言葉も一緒だし。

LCCなので航空券も時期を選べばかなり格安。
もちろんイギリスは海外だしパスポートは必要だけれど。

という訳でこの週末は二泊三日でイギリスに住むシルビアに8年ぶりに会いに行きます。

いやっほー。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。