田舎小僧の小さな冒険
7月某日、アイルランドで初めて鉄道駅と電車を見た小僧達。
でも、電車は見るものではない。乗るものです。
コロナの影響で日本に帰国も叶わなくなり、電車や新幹線に乗れなくなったので、せめてアイルランドで電車に乗ろうではないか!
とにかくこの日を小僧達は楽しみにしていました。
最寄り駅まで車で20分、そこから電車でシティに行き、駅からシティセンターまで20分歩き、マーケットでランチのホットドッグを買い、バスで市内の公園に行き友人と遊ぶ、というのがこの日の予定。
目的地まで車、電車、徒歩、そしてバスを利用しなければならない。
車がある人は子供連れてわざわざこんなプロセス経てシティなど行きません。
車だけで行けば家から40分で行けるのを倍以上時間をかけ、面倒くささは気分的には5倍くらい。
子供連れの外出は何しろ荷物が多い。車ならいくら荷が増えようがお構いなしですが公共交通機関を使うと勝手も違います。
しかし今回ばかりは面倒くさがってはいけない、今日の電車は交通手段ではなく目的なのだから。
最寄りの駅に着くと、まさに電車が到着寸前でした。
ふー。ギリギリセーフだ。
一年半前に日本に一時帰国した際、勢いよく山手線に乗り込もうとして、片脚が電車とホームの隙間にズボッと落ちかけた長男。
ホームと電車の間に足を挟まないように気をつけて乗車。
ボックスシートに座り、そわそわ外を見ている内に発車します。
電車が動き出した瞬間の2歳児の興奮は最高潮。瞳がらんらんと輝いている。
小僧達、約25分ゆっくり進む車窓の景色を楽しみ、終点のシティに到着。
そこからシティセンターに歩きます。
通常、私だけなら15分以内で余裕で行ける距離な筈ですが。
やっぱり都会慣れしてない小僧達連れて歩くのは30分以上かかりました。
5歳児は物乞いの女性にも元気に「はーい」と挨拶し、
2歳児は大きな川沿いの橋を歩きながらまるで進まず、そこを過ぎても一つ一つが初めて見る物ばかりなので気を取られなかなか歩かない。
ウーウーとサイレン鳴らす白バイ、
キメキメドレッドヘアの黒人、
路上ライブやっているバンド、
かわいいオブジェのショーウィンドウ、
市内を何台も走るバス、
かっこいいバイク、
歩道に溢れる沢山の人、
目に入る物全てが物珍しいのだ。
我が家の前を今の時期なら一日30回以上は通過する農業用トラクターは都会にはない。
シティと言っても人口20万程度、私的にはタウンみたいな街ですが。
屋内のマーケットで小僧達のランチのホットドッグ、私のサラダランチ買うのに、外で少し並ぶ。
コロナの影響でどの店も入店制限しており、人気のある店は外で並ばなければならないのです。
5歳長男、並びながらキョロキョロ周りを見渡し、
「マミー、見て。このビルディング、凄く高いねー。」
見ると、向かいの通りのそのビルはだいたい5階、6階程度しかないではないですか!
違う意味で母は仰天したり。
この5歳児、これでも幼少時に一年間東京に住んでいたんですよ。
今やこの子達、正真正銘のお上りさんです。
ランチを無事に購入し、待ち合わせしていた友人と娘ちゃん2人と合流し、バスに乗り込みシティの公園へ。
プレイエリアがかなり充実している公園のため、子供達はさっさと遊びに夢中になりました。
街歩きで異常に神経使い、既にエネルギーがすり減っている母はベンチで早速サラダランチを食べながら一休み。
お天気の良い土曜日、公園はかなりの人出です。
公園で遊ぶ人も人種が多様。
5歳長男は中国人らしき少年達と仲良くなったらしく、しばらく一緒に遊んでいました。
私達の近くの公園ではアジア人の子はあまり見かけないので親近感を覚えたのかもしれません。
2歳次男は噴水のある池が、気になって仕方ないらしく、そこの鴨相手にしばらく遊びました。
3時間近く遊び続けた小僧達。
しかし、行きが面倒なら帰りも同じ。田舎町への電車もバスも本数が少ないため乗り遅れると1時間待たねばなりません。時間を多めにみて嫌がる小僧達を促し帰ることに。
公園からバスでまたシティセンターへ行き、時間に余裕があったのでアイスクリームショップへ。
大通り沿いの窓際の席に着くと、2人はずっと飽きることなく行き交う人の流れを見ているのでした。
突然、5歳長男は訳知り顔で言います。
「マミー、僕は1つわかったことがあるよ。大きい男の子達は必ず大きなグループで行動してるんだよ。だいたい、5人以上だね。まれに女の子が中にいることもあるけど。ほら、あの人たち見て。」
確かに10代の子達は通常グループで街を闊歩しています。
「そうかもね。あなたもそうなるのかな?大きくなったら。」
「僕も大きくなったら、友達達だけで歩くよ!」
そうなんです、きっとこんな風に親と喜んで一緒に出かけるのなんて小さなうちだけ。
彼も十代になれば駅やエレベーターやエスカレーターに大はしゃぎした事など忘れて、友達達とバスや電車でシティに来て都会の遊びもするのでしょう。
そんな未来まで予感させるなんて、5歳児只者ではないな。
いつか私も鉄道とバスの日帰り旅を懐かしく思う日が来るのかもしれません。