かぼちゃと共に燃え尽きる夜。

おはこんばんちわ。
飯塚です。

アイルランドの子供達が一年で一番楽しい日。

それはおそらくハロウィンではないかと思います。
少なくとも我が家の息子1号はそうですし子供を持つ人たちの話を聞いていてもそんな感じがします。

仮装好きな子供達のためにハロウィン休暇前の金曜はほとんどの幼稚園や小学校で仮装して登校し、パーティもするのです。

その一大イベント、先週土曜日に終わってしまいました。

3歳の頃からつい最近まで息子はハロウィンの話を一年中していました。
真冬や春にはハロウィンはいつか?と聞き。

夏頃はハロウィンまでどのくらいか?と聞き。

ハロウィン近くなるとあと何日?と聞きつつ、カウントダウンが始まる。

ハロウィンが終わると、次のハロウィンはいつ?と言った具合。

6歳になった息子は流石にもう次のハロウィンは一年先だと学んだようでしたが、つい近年までは終わってすぐに翌年のハロウィンを待ちわびていたのです。(子供のこういうところが鬱陶しくもあり、愛しくもある。)

彼のハロウィン熱のきっかけは3年前。
私たちは村の中心地に住んでおり当時3歳の息子1号を始め家族全員がアイリッシュのハロウィンの洗礼を受けたのでした。

メイン通り沿いの我が家には夕方5時を過ぎると仮装した子ども連れの親子がひっきりなしに訪れ始めました。

私達も怪獣の着ぐるみを着た息子を連れて家々を巡りました。
私は始めの数軒のみ周り、あとは夕飯の準備の為に家に帰りましたが、小一時間ほどしてから帰宅した夫と息子の興奮たるや、今でも忘れる事はできません。

息子1号当時3歳。幼児は大人付き添いです。怪獣の後ろ姿が懐かしい。

夫の話によると、集合住宅地に無数の小さなゾンビや吸血鬼、フランケンシュタイン、映画のキャラクター(トイストーリーやバットマンなど)が練り歩き、凝りに凝った装飾の家々からは怖いマスクや精巧に仮装したゾンビが出迎えるのです。
彼らは仮装した幼子にも大袈裟に怖がる演技をし、仮装をべた褒めし、大量のお菓子をバッグに入れてくれます。

当然ながら息子にとっては夢のように楽しい一夜でしたが、田舎の寂しい村で育った夫が子供以上に興奮して、
「いやーあれは最高だ。雰囲気がめちゃくちゃ良い。こいつが羨ましい!!俺はこんな楽しいハロウィンは経験したことないぞ!!」と力説していたのが印象的です。

その家に住んでいたのは2年だけ。しかも2年目はハロウィン直前に引き払い、今の家に引っ越してきたのでお祭り騒ぎなハロウィン体験はこの時限りとなりました。

田舎の村外れに住む今となっては、あの時子供と一緒に周ってその光景を見ておくべきだった、とちょっと後悔しています。

戦利品。そりゃ、子供は楽しいよ。毎日ちょっとずつ食べるのでしばらくハロウィン気分の余韻に浸れるのも良いのかも。

元々はお盆みたいな慣わしです。

ちなみにハロウィンの発祥はアイルランドというのはご存知でしょうか。

ケルト人の1年の終わりは10月31日で、秋の終わりと共に冬の始まりでもあり、死者の霊が家族を訪ねてくると信じられていたのだそう。
時期を同じくして出てくる精霊や魔女から身を守るために仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いたのだそう。

ハロウィンはケルトにおけるお盆のようなものですね。
それが今や世界中のお祭り騒ぎになっている不思議。

アイルランドでは通常、夏が終わるとどこのスーパーもハロウィンのデコレーション、コスチューム、そしてチョコレートやグミ、カップケーキなどを大量に店内に出し始めます。

かぼちゃ、コスチューム、お菓子、どこのスーパー行ってもハロウィン!

シティには期間限定のハロウィンコスチュームやデコレーション専用の店も出来ます。(コロナの影響で今年はたぶんやってないかも)

家の飾りに凝る人は庭や窓周りにありとあらゆる物を飾ります。

人によってはクリスマスよりハロウィンのデコレーションの方が楽しい、と言います。

気合入っている家。

子供がいる家はたいてい飾りをしますし、子供がいない家も飾り付けがしてあれば、トリックorトリートをやっている家という目印。

気合い入りまくりの家。

自慢の家庭菜園かぼちゃの出番!!

我が家は飾りはそれほど気合い入れてはいませんが、夫が丹精込めて育てたかぼちゃが今年は3つできました。
一番大きなのから25㎏、19㎏、13.5㎏もあり、それらをくり抜いて家の前に飾りました。

これも息子1号が毎日のように、いつジャックオーランタンを作るんだ?!ってしつこくて仕方なかったです。

一番重いのは運べなかったのでゴロゴロ転がしました。

そういえば、アイルランドにきて初めの頃、この大きいオレンジのかぼちゃを日本のかぼちゃと同じような感覚で調理したことがあります。

ちゃんと味見すればよかったのですが、そのサラダは褒めるポイントゼロな激マズな出来栄えでした。かぼちゃ自体が水っぽく味がとても薄い(甘みがない)という事を知らずに作ったサラダはとにかくべちゃべちゃで、味が無く。作ったのはほとんどゴミ箱行きになった悲しい記憶があります。

実が柔らかいからこそ、ジャックオーランタンに切るのは簡単。包丁はスイスイ入って初心者でも安全に切れるのです。
日本のかぼちゃであれはかなり難易度高し。かぼちゃが固すぎて命懸けになります。

今回、中身は食べずに我が家の鶏さん達にあげました。。
種だけ洗ってオリーブオイル、塩を振ってオーブンでローストしておつまみで食べました。

子供は中身を掘り出す係。
三兄弟完成。何気に腕が上がってきた。

コロナめーー!!

10代後半や20代の若者層は仮装をしてパブで飲み明かすのが通例なのだそう。
夫も20代の時、ハロウィンの日に女装して友人達とパブに行ったら、別のグループの男性にえらく気に入れられてしまい、本当は男なんだと伝えても引き下がる気配がなくて身の危険を感じた、と話していました。
あとは若者はパーティーや花火、野外で焚き火などをするのも一般的なようです。

しかし残念ながら今年は楽しいハロウィンはお預けです。

2週間前の木曜日から一番厳しいロックダウンになったアイルランド。
パブも休業。
パーティーは禁止。見つかると罰金。

家々を訪問するトリックorトリートはしないように、と国レベルでお達しが出ました。

息子も学校の先生から言い渡されたそうですが、しっかり者というかちゃっかりしている彼は隣人にトリックorトリート行ってもいいか、直接交渉をしていました。
また、他の家の方々からも、「どうか今年もぜひ来てね。お菓子たくさん用意して待ってるから」と声をかけていただきました。
今の私達の住まいは町外れで家が8軒しかないし、子供達は我が家と隣家しかいないため、お菓子もさほど用意する必要もなく、今年は昨年と同様のハロウィンとなりました。

ちなみに息子1号はウルフマンの衣装とお面(スーパーで買った激安品)で仮装。
2歳半の息子2号はまだハロウインの意味も理解しておらず、息子1号が昔着た怪獣の着ぐるみを身につけることを断固拒否。奇しくも普段着のままで行くことに。
また、夫と私もそれぞれフェイスペイントをして家族4人でご近所さんを周りました。

尚、今年の町中の家々は例年のようにトリックorトリートで知らない家にいきなり訪問するのはなかったようです。

以前の家に住んでいたら、今年のハロウィンはかなりガッカリしただろうと思います。
田舎暮らしである意味助かりました。

当日夜、村のFacebookのコミュニティには「若い子達が家のドアに生卵を投げつけてきてけしからん!」という投稿がありました。
若い子達はどこにも発散できないコロナに対する不満をぶつけてしまったのか。
絶対やってはいけないことだけど、楽しみを封印される若者達も気の毒すぎます。

寒くなり日照時間もグッと減るこの時期だからこそ、心躍る楽しい夜を誰もが待ちわびてもいるのです。

大人達が子供達を楽しませる為に家の装飾や自身の仮装、子供の仮装にも気合いを入れて一緒に楽しんでいるハロウィン。

来年はまた誰もが楽しめる夜でありますように。

魔女の指クッキー。爪はアーモンド、血はジャム。焼く前。
焼き上がりはちょっと肥えた感じ。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。