世界旅は違う世界の人との出会い。

おはこんばんちは。飯塚です。

三連休でした。毎日晴れで暑くて(もちろん20℃です)海にいました。

家にほとんどいなくてご飯もあまりちゃんと作っていない。

でも家族は皆楽しんでいていい毎日です。

家から徒歩25分のこのビーチは地元民しか来ない秘密の遊び場。4日間連続で遊んだ。

トルコの旅は素晴らしかったんですがその話ではなくて帰りの便の話です。

90年代の東京のヤクザの世界を外国人の視点から描いた「Tokyo Vice」。

このドラマシリーズを観た時に思い出した人がいます。

この人の出会いは強烈で、当時友達と飲んだ時などネタとして話題にしました。もう16年も前なのかー、と遠い目をしてしまう。

2007年夏トルコ旅。

三週間で一周、とまでは言わないけれどぐるりと各地を周れた最高に楽しい旅。

カッパドキア。こんなところに人が住んでる。

帰国便はイスタンブールからモスクワ乗り換えのアエロフロート。

かなり古い機体。個々の席にモニターがない、というのは長旅に致命的。

長時間のフライトは映画を観るのだけが楽しみなのにそれが出来ないなんてなんてこった!

周りは日本人のツアー客ばかり。旅を終えて日本に帰国する人達が楽しそうにガヤガヤと席につく。

エンタメ提供者、現る。

その中をサングラス、上下白のスーツ姿の中年男性がかき分けてきた。

彼のチケットの席番号は私の隣りらしい。

先に席に着く私の姿を一瞥しサングラスを外し

「日本人?君もこのツアーの人達と一緒?」

と聞いてきた。

「いや、私はツアーじゃないんです」

「一人なの?すごいね、若い女の子の一人旅なんて度胸あるな」

「お一人なんですか?」

「うん、ワシも一人」

ちなみに広島出身のオッサン、本当はバリバリの広島弁だ。

しばらくして落ち着くと、オッサンまさかの

「彼女に会いに来てたんやけど。いや〜、年の離れた彼女がいるけん、本当大変なんよ」

ん?いきなりこの前フリスゴいな。

映画がお預けの空の旅。

ヨッシャー!オッサン、その話、乗った!

気が済むまで自慢の恋バナを聞かせてくれい!

腹の中で両手をバチンと叩いた。

知らない世界はこうなってる。

広島出身のオッサンには24歳のモスクワ人の愛人がいる。

出会いはロシアンパブ。

ロシアンパブで働く女性たちは一攫千金、早い話パトロン狙いで来日する。

愛人探しの客とマッチングすれば大成功。

オッサン(広島弁なんですが当方広島弁には明るくないので正しくはないはず。大目に見てください)

「前の彼女もロシアンパブで見つけてな。25歳になったから別れたんや。今の子は2人目。19歳から付き合い始めて今24歳。」

彼女が25歳になったら別れる、ってまんまレオナルド・ディカプリオのセオリーかい。やるな、オッサン。

というわけで見た目は國村隼だけれど、ここからはレオ様と呼びます。

「24歳のロシア人、美人でスタイルいいんでしょうねー。脚も長いし羨ましいです」

「モデルみたいじゃけぇ。背もわしより高いし腰の位置が違う。それにな、子宮の形が違うんじゃ」

おーっと!いきなりシモネタぶち込んできましたよ。

私がまだ若くて潔癖ならば

「まぁ!なんて不潔なオッサン!もう二度と口も聞きたくない」

なんて拒絶するのかもしれないけど、もう生娘っちゅう歳でもないし基本的に面白がり屋。

子宮の形、そりゃ違うでしょうなぁ。オホホホ。的にテキトーに聞き流す。

幸い、これ以上夜の話もシモネタもなかった。

「モデルみたいな見た目だけど、月々にあげるお金は日本人の彼女の半分以下で済むんやで。こんなええ話ないわ。毎月500ドル送ればええ。日本人の彼女なら月20万くらいやらなあかんやろ?」

はぁー、毎月送金。そうなんすか。色々勉強になります。

「こうして会いに来たらな、家族総出でご接待してくれるんや。空港に送迎来てな。黒海のビーチの別荘借りてご飯作ってくれてパーティーじゃけぇ。セレブ気分や。」

ふむふむ。娘のパトロンには家族も賛成なんですね?よくわからない世界だ。

毎月日本から送金してくれるスポンサーだもんね。

トルコ側の黒海。私も地元のツアーで半日だけ行ってきました。

「滞在してる間の金はもちろんワシが全部出すし、毎日高い酒も飲んでな!物価やすいから余裕じゃけぇ。ほんで帰る時に2000ドル置いてきたわ」

家族総出でセレブなバカンスできる上にボーナスまで出るなら全力でご接待するわな!知らんけど。

ちなみにレオ様、62歳。奥様もいるし子供は三人。長女は31歳だそうで。

レオ様、自慢話をひとしきりできて満足。

レオ様には武勇伝なしの一人旅など想像できない。

レオ様

「でもお姉ちゃんもアレやろ、一人旅しとるってことはそれなりにハメ外して楽しんどんのやろ?」

ニヤリとしながら私の顔を覗きこむ。

なに〜?私も武勇伝を語れとな?

あやいやだ。自慢できる夜の話、あったかなぁ。しかし残念ながら。

「いや〜、自分、病気とか怖いからないっすねー」

なんだよ。自分、とかないっす、とかなぜいきなり体育会系の口調でしかも全然つまんない返ししかしないんだ。

せっかくなんだから作り話でもいいからレオ様にエンタメ提供してあげればよかった。

レオ様みたいな

「海外一人=ハメ外して夜の武勇伝作り」な人にとってはチョメチョメなど縁がない一人旅なんて想像つかないのかもしれない。

機体が古いアエロフロート、酷いのは機体だけではなく機内食も石鹸みたいにガチガチなチーズ、とか散々だった。

そんな機内食に愕然とする私の横でレオ様はサランラップに包んだすじこのおにぎり、なんて神々しい物を頬張っていらっしゃる。

うわー、なんすか。それー。ゴックン…。

またもやレオ様はドヤ顔で

「アエロフロートの機内食は最悪やからな、いつもこうして持ってくるんじゃ。このおにぎりは彼女のお母さんが朝作ってくれたんよ。日本と同じ味で美味しいで。お姉ちゃん、一つあげよか?」

うぅ。ロシア人の母の味おにぎり。

本当は喉から手が出るほど食べたかったけれど、ここはさすがに遠慮した。

な、なんとレオ様からまさかのスカウトが!?

機内食を食べて少し眠ったりもしつつまたレオ様は気が向くと会話をする。

「お姉ちゃん、仕事何してんの?」

「実は会社辞めたんで、帰ったら求職活動しなきゃいけないんですよねー」

「そんなん大変やな!お姉ちゃん東京住んでんの?ワシの関連会社紹介したろか?連絡するけど?」

「なんの仕事ですか?」

「ほら、賃貸とかで賃料払えなくなる人おるやん。代わりに家賃払ってあげたりする仕事」

えーっと、それって、世間で言う取り立て屋ってヤツですよねぇ?

モノは言いようですな。

「ありがとうございます。でも目星もだいたいついてるんで大丈夫です。(もちろんでまかせ)」

「ま、なんかあったらいつでも連絡よこしたらええ。ほれ、これワシの連絡先。お姉ちゃん度胸ありそうやけん、しっかりしとるからすぐ雇ったる」

とご丁寧に名刺までいただいた。

ま、ひとり旅してたら度胸ある系人間に見えるわな。

愛人向けではないけど、取り立て屋の見込みはありますかね?

お金を持つ者が買いたいものは世界共通。

レオ様、見た目も話もヤクザそのものだけど基本的に隣りの乗客としては全く無害。

「安全で楽しい空の旅」

をご提供いただいた。

私にはご縁がない愛人契約の世界。

ロシア人にとっては期間限定の割のいい仕事に違いない。

若い美女は価値のあるうちに自分の美を売る。

女の価値は25まで。それは不文律のルールなのかも知れない。

いいパトロンを見つけて稼げる内にガッポリ稼ぐ。

もしかしたら他にもパトロンがいるのかもしれないし、ちゃんと若くてカッコいい彼氏だっているはずだ。

遠距離なんだからなんだってあり。

どちらがタヌキでキツネなのか。

日本がまだお金のある時代、日本人男性はフィリピンやロシア人女性を買うなどと批判されていた。

旅をしながら、富裕国の男性は安い国の性を買う、というのは世界の共通項だと思い知らされた。

ウクライナやルーマニアには西欧から「恋人探し」ツアーで大挙して男性陣が訪れる。

ルーマニアの田舎の村は美しくご飯も美味しいのです。

一月に訪れたキューバは、寒さから避難してきたカナダ人男性の巣窟。

ハバナのレストランやカフェはナイスバディなキューバ人女性を伴ったカナダ人男性カップルで溢れかえっていた。

キューバにはこんな車が普通に走っている。

成人の男女間で交渉成立しているならば、それはある意味立派なビジネス。

あの頃の日本は、まだギリギリ経済大国の看板があったから買う側だったけれど。

当時の私にはまるで想像もつかなかったけれど、日本円が弱くなった今、日本は買われる側に逆転しているのかもしれない、と思うと余計に複雑な心境になる。

自分自身や家族には関わって欲しくない世界、だけれど、こんな世界もある、という事実は知っておいてもいい気がする。

レオ様、貴重なお話どうもありがとうございました。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。