よそものだもの。

おはこんばんちは。飯塚です。

10月ですね。

9月は異常気象的に暖かかったアイルランド。

しかし先週あたりから空気が冷たくなってきて家族全員で軽く風邪をひいています。
というより会う人皆風邪引いている感じ。

今週月曜には今季初の薪ストーブ火入れをしました。

庭に溢れている薪ストーブ用の薪。夫が数日かけてチェーンソーで切り続けていた。

日本は本当にアジア人しかいない。

アイルランドに住んで間もない頃、日本からアイルランドの飛行機はアムステルダム乗り換えでした。

アムステルダムからアイルランドの便で隣に座った男性に、
「アムステルダムにすんでいるんですか?オランダ人ですか?」

と聞かれて仰天しました。

こんなチンチクリンなオランダ人はおらん。
「私みたいな見た目のオランダ人はいないですよね?」

と逆に聞き返すと、
「そういうものかな。ニューヨークに住んでいる僕からすると見た目で何人とは判断できなくて。ニューヨークには白人、イタリア系、黒人、アジア人、どんな人種の人もいるから。」

と言われ目から鱗で。

確かにニューヨーク、想像していたより黒人率が高くアジア系も多くそれこそ人種のるつぼでした。

そういう場所に住むと視点もニュートラルになるのか。

大都市東京でさえ、ニューヨークやロンドン、パリみたいな人種のごった煮感はない。

東京に一年住んだ私の夫も、白人や黒人の少なさには驚いていました。

東京ほどの都会でこれほど人種が混ざってない方がかえって珍しいのかもしれません。

アイルランドの田舎は白人ばかり。

先日、いつもお世話になっている地域のクリニックで娘の予防接種を受けました。

担当の女性医師は明らかにアイリッシュではなく、スペイン人かな、と思っていたので聞いてみたら、ルーマニアのブカレストから来たのだそう。

英語の訛りがスペイン人ぽいのでだいたいスペイン人、イタリア人に間違われる、と言っていました。
アイルランドでルーマニア人は珍しい。

「私ルーマニア、旅した事ありますよ。
ブラショフが綺麗でした。秋だったからキノコが美味しくて。ワインも毎日飲んでた。」

なんて話して、コロナがあるから国に帰れないよね、とよそもの同士愚痴ってみたり。

ルーマニアのブカレスト朝6時出発のバスの車窓で見た朝焼け。

私の住む田舎の村、昔から住む地元民ばかりのため、外国人は目立ちます。

日本人はたぶん私1人。

韓国系アメリカ人の女性が一人。

息子のいる学校にはパキスタン人の姉妹。

クラスにはナイジェリア人の黒人の子が一人。

スーパーには1人フィリピン人が働いています。

昨年夏にタイから引っ越してきたスペイン人の女性とは子供を学校に送りがてら世間話をよくします。

狭い村でよそものはお互いよく知っている。
子供達の集まりで連絡先を交換したのもチリ人やイギリス人。

幸い、基本的に優しく温かいアイリッシュの人達に日頃差別や嫌がらせをされる事はほぼない。

とはいえ、よそもの同士の方がなんとなく心が通い合う。

息子のサッカー教室にも、ベトナム人のハーフの女の子がいて、私の息子に親しげに話しかけるので、子供でも同じような心境なんだろうか、と見ています。

日本人なら誰でもいいのか?

ダブリン辺りだと日本人のコミュニティもあるようですが、私の住む地域ではありません。

聞いた話ですが、ロンドンのような都会だと日本人のカーストみたいなのがあり、特に駐在組は旦那様の役職そのままに駐在妻の序列がエグいとか。

その実例を聞くだけで日本以上に日本の嫌らしさ濃縮で吐き気がするし、そんな世界にいなくてよかったと安堵しかなく。

そもそも、その社会では私のような現地人妻が最低カーストらしいので一目も置かれてないんですが。

一応、私の住まいから車で40分のシティには日本人が何人かいて狭い世界なのでそれなりに名前や顔を知っていたりはしますが、私は遠いこともありそれほど会うこともなく。

最近2年くらいは年の近い子供達がいる友人とたまに会っています。
アイリッシュ日本人のハーフな子供達、遊ぶ時は結局英語なんですが、私達母親は久しぶりに日本語で会話を出来るのが嬉しい。

日本人だからこその情報交換をしあったり、美味しいお店もアイリッシュからの情報より日本人のお勧めの方が信憑性が遥かに高い。(日本人だと味覚が近いからというのもあると思うけど)

アイリッシュの友人があそこのラーメン美味しかったというので行ってみたら、コレ。味も見た目を超えるはずもなく。アイリッシュを信じた愚かな私を呪いました。

とはいえ、在外邦人が新入り日本人に親切にしたら住所を使われた、とか、家に居座られた、車を持ってない人に足代わりに使われた、みたいなのもよく聞く話で、痛い目に合った日本人は新入り日本人とはなるべく関わらないようにしてる。また、無闇に人に親切にしない、というのも実によくある話。

それに日本に居た頃に気が合わない人や苦手な人がいたり私自身を嫌っている人もいる訳で「日本人」なら気が合う、なんておかしな話なのです。

気が合わない日本人と違和感覚えながら日本語で会話するより、この人といると楽しい、と思う人と英語で会話する方がよほど居心地が良い。
日本を出て人種や言語は単なる要素でしかないな、と改めて気付かされたりします。

マイノリティを意識する。

人種差別はある。
旅をしていた時にもありました。

ミラノの街中で50代位の女性にいきなり険しい表情で怒鳴られたり。

キューバのハバナで道ゆく地元男性から「チナ(中国人)!チナ!」と囃し立てられたり。

クラシックカー、美しい建造物、青い空。これこそキューバ。

南米パラグアイで、白昼に男性から石を投げながら追いかけられそうになり、一目散に逃げた事もあります。

パラグアイの街中で出会った子供達

私が欧米人の見た目ならこれらは起こった事なんだろうか。

私の好きな作家が、他国に住む事の大きな違いはマイノリティ、差別される体験を日常的に持つ事。

みたいな事を何かで書いていて、実感としてその通りだと思うのです。

先日、パリ在住の日本人の有名人がブログで

「一度も人種差別をされた事がない」

みたいな事を書いていてTwitter上で在外邦人達一斉に、そんな訳ないだろう!とざわつきました。

仮に彼が本当に人種差別をされた事ないと言い張るなら、よほど鈍感なのか、それとも自分の住む場所を天国だと思い込みたいのか、どちらかじゃないの、と。

実はアイルランドでも時々モヤる。

私の住む村では差別体験はなくてもシティでは何度かアジア人、または有色人差別されたことはあります。

アイリッシュの夫や友人と一緒にいたら差別的な事は起こらない。

レストランの店員に無視され続けたのは日本人の友人といた時。

数年前に一人で最終バスに乗ろうとしたら、ドライバーがお釣りの札束を手に持ちながら、
「お釣りないから乗せないから!」
と言われたことも。

「最終バスなんだからこれを逃したら帰れない!あなたの名前を教えてください。バス会社に確認させてもらうから。」

と抗議し、ドライバーは渋々了承。

帰宅して夫にこの話をしたら、

「今度同じ目にあったら、あなたはracist(人種差別主義者) なのか、って言ってみな。すぐ引っ込むから。」

と言われ、アイリッシュならこういう嫌がらせはされなかったのか、と思い知りました。

夫の家族が地元出身の田舎暮らしの私は、この村である意味守られている。

都会に住めば差別をもっと日常的にされているのだ、ということにもその時気付きました。

また、アイリッシュは「黒人嫌い」などと普通に発言するので黒人ならもっと差別を経験するだろうとも思うのです。

中国由来のコロナの影響もあり世界中でアジア人差別は益々表面化しています。

シティに住む日本人の友人の話によると嫌がらせはあるそう。

日本人は中国人と違い差別されないなんて言う人もいますが、アジアに住んでいた人やアジア人の事をよく知る人以外は日本人も中国人も違いはわかりません。

見た目がアイリッシュでも日本人でもない私の子供達も差別されるのだろうか。

今は無邪気に日本人ハーフであることを誇りとする彼らにどんな未来が待ち構えているだろう、と少し思いを巡らせています。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。