熱い!アイルランド映画界。
おはこんばんちは。飯塚です。
日曜日はセントパトリックスデーでした。
ダブリンは毎年観光客が押し寄せ盛大にパレードします。
私達の住む村も例年通りに地元のスポーツクラブや会社関係、トラクターやバイカーが一同に集まりパレード。
都会に比べるとなんて事ないイベントですが、子供達はしっかり盛り上がって楽しかったよう。
今週末からはイースター休暇。
日本にいる9歳の息子も明日が学校最終日で来週には帰国します。
早いなぁ。たくさんの事がありすぎ、しかし現場にいない私は全く整理がつかなくて何を書いたらいいのか逡巡中。
息子もアイルランドに帰るのを楽しみにしている反面、半年間お世話になったおじいちゃんおばあちゃん、クラスの友達、先生、バスケットボールのコーチや仲間の皆さんとの別れが悲しくてやりきれないよう。
1月に観た映画ですが、今年一番の映画じゃない?!
日本にいた会社員時代、映画業界で働いていました。というわけで仕事でもプライベートでも映画の話ばかりしていました。
結婚して子供ができしばらくは映画から遠ざかってましたが、最近は一人で観たい映画を観に出掛けます。
昨今は家でも最新映画を観られるけれどやっぱり劇場で鑑賞するのが一番。
日本にいる時から映画はよく一人で観に行ってたので、いわゆる「ぼっち映画」はなんとも思わない。
でも観終わって誰かとその映画について語り合いたい。アイルランドではそれができない。
というわけで、今日は異常に饒舌なのは自覚してます。
止まらない映画の話を思う存分させてください!
今年のアカデミー賞、日本は宮崎駿作品「君たちはどう生きるか」、ならびに山崎貴監督「ゴジラ」も受賞でそれなりに話題になっていたのではないかと想像しています。
アイルランドも今年、アカデミー賞前章のゴールデングローブ賞時から異様に盛り上がっていました。
というのも「哀れなる者たち」の制作にアイルランドの映画会社が関わっており、撮影がアイリッシュのカメラマン。
アカデミー賞撮影賞ノミネートで。
「哀れなるものたち」観ました?
映像も俳優陣もストーリーも私は凄く好きで。
内臓抉る系のグロさとセックスシーンの多さに拒否反応示す人は一定数いることは理解できます。
ただ、そのグロさに勝る映像美と話の展開もグイグイ入っていけるテンポの良さがあって一瞬も退屈しない。
予想がつかなかった気持ちよい結末も爽快。
鑑賞したのは一月だったけれど「これは今年一番の映画になるんでは?」と思えたし、今の時代も尚「新しい映画」というのは出てくるんだなぁ、スゴイ世界を見せてもらった!!映画館で観られて良かった!と興奮しながら帰途につきました。
すぐに作品詳細を検索。
ギリシャのヨルゴス・ランティモス監督っていうんですね。
映画からご無沙汰してると新しい名前の人が増えていく。
過去作「女王様のお気に入り」も翌日鑑賞しました。
これも凄く良かった。
人間の怖さ、弱さや狡さ、嫉妬。高潔さ、プライド。感情の描写の対比が絶妙でした。
公開時からアイルランドはずっとこの映画が話題です。
また「オッペンハイマー」のキリアン・マーフィーがアカデミー賞主演男優賞受賞。
アイルランド人でこのカテゴリー受賞は初めてだそう。
『原爆を作った男』ロバート・オッペンハイマーを描いた「オッペンハイマー」。
監督クリストファー・ノーラン。前評判が異常に良かった。
こちらでは昨年夏に公開で。
日本は被曝国という事もあり、上映には後ろ向きになり世界からかなり後発の公開となりました。
話が少し逸れますが、日本人には受け入れ難いけれど、アメリカ人は「原爆は正しい選択だった」という世論が一般的、だという事実は知っておいた方がいいと思います。例え自分は賛成できなくても「世界はどう見てるか」を知る事は大切。
とはいえ、海外に出るとまた、Tokyo, Osaka, と同じくらいにHiroshima, Nagasakiの知名度がある事にも気付かされます。
私達日本人がアウシュビッツ収容所を知るように世界の人々も広島や長崎の原爆の歴史を学んでいる。
世界にはアメリカを毛嫌いする人も少なくない。彼らから「アメリカにあんな爆弾を落とされたのになぜ日本人はアメリカを恨まないんだ?」と聞かれる事もあるくらいに原爆の事は知られている。
話を本題に戻します。
イギリス人監督によるこの映画は日本人が危惧するような「原爆が正しかった」という話ではない、と私は感じました。
オッペンハイマーの原爆を作る上での苦悩や葛藤、プレッシャーに押しつぶされそうなギリギリの心理が描かれています。
それは「英雄」という形ではなく。
確かに物足りない。原爆後の広島も長崎も出ない。
原爆を描くならば、原爆の影響や落とされた後の陰惨さを出すべきなのでは?という違和感は私も真っ先に抱いた。
でもこの映画はタイトル通り「オッペンハイマー」という男の話。
その彼を取り巻く人間関係、政治的、また科学的な話。
台詞が多くて。
だいたいの流れは掴めたものの、詳細はついていけてないのは自覚し。
早い話、私には難解でした。
もっと正直に言えば「日本語字幕付きで観たかった」
そして。もっと予習してから観れば良かった。
緊張感がずっと続いた三時間、音楽も映像も俳優陣も素晴らしいのに。
私の英語力も歴史的知識も足らなくて、存分に鑑賞出来なかったのが歯痒くて。
せっかくミシュランスター三つ星のディナーに行ったのに、風邪ひいて鼻詰まりで虫歯が痛かったらお料理も味わえない。
悔しい、私の至らなさだけが敗因だから。まさにそんな心境で。
英語圏に住んで10年。ニュースやラジオ、ホームドラマ系はだいたい聞き取れるけれど映画は俳優さんによって、また難解な内容だと聞き取れない事は未だにあります。「オッペンハイマー」は私のこの弱点を改めて痛感させられる作品でした。
そんなわけで私も今一度日本語字幕付きで観たい。
日本人としては胸が痛む場面もなくはない。
でも、「原爆万歳映画」ではない。
クリストファー・ノーランの最高傑作、との呼び声も高いのは納得できます。
アカデミー賞主要7部門受賞。
アカデミー賞主演男優賞受賞のキリアン・マーフィーは本当に素晴らしい。
長いはずの三時間。でも長く感じる事はなくて。
緊張するので鑑賞後は疲れますが。
日本は3月29日公開です。
昭和の日本の名作をリメイクしていたとは。
「異人たち」
主演アンドリュー・スコットと助演男優ポール・マスカル、ともにアイリッシュ俳優。
予告と俳優陣を知り、なんとなく観に行ったのですが。
終盤になってやっと気づいた。「あれ?私この話知ってる。これって「異人たちとの夏」そのものじゃない?」
いや、もっと早く気づけよ、って思わず自分で突っ込んでしまい、エンドロールを注視してたらあったTaichi Yamada の名前。
日本の予告やポスターでは「異人たちとの夏」を大々的に謳ってますが、元々こちらではオリジナルの知名度がないためにその宣伝文句はないのです。
うわー、懐かしい!
「異人たちとの夏」ってご存知ですか?
公開時は1988年。私もリアルタイムは子供でしたので劇場では観てません。成人してからDVDで観たのかちょっとうろ覚え。
12歳の時に事故により両親を亡くした男が、ひと夏だけ「あの時の両親」と再会する。という話で。
大昔に観たきりだった昭和の名作、YouTubeで期間限定上映していて改めて久しぶりに鑑賞しました。
風間杜夫主演、母親が秋吉久美子、父親が片岡鶴太郎。片岡鶴太郎さんが下町のお父さんで、凄く良いんです。秋吉久美子さんも優しくて気のいい美しいお母さんが凄くあっている。名取裕子も色っぽくて美しい。
浅草の雰囲気も懐かしくて。
母の実家から近い浅草。
子供時代から花やしきや浅草寺近くによく足を運んでいたので私個人的にも思い入れのある場所。
で。この現代風リメイクは賛否両論あると思うけれども私は好きでした。
俳優陣がとても良かったし、設定も無理がないかと。
リメイクの唯一違う点は主人公が同性愛者。
そこも含めて違和感がなく、丁寧にオリジナルにリスペクトして作られていると私は感じました。
ロンドンのどんよりと曇った夏なのがまた雰囲気に合っている。
子供時代に亡くした両親に会う。
大切な者を亡くした人なら誰もが夢想する「またあの人に会えたらいいのに」という願いを叶えるファンタジー。
私達が知るのは「残される者」の思いだけ。でも特に幼い子供を遺して逝く者の想いは計り知れないほどに悲しい。
だからこそ、息子が訪ねてくれたら「さぁ。ビールを飲もうよ」と満面の笑みになる。
限られた時間だけでももう一度会えたら。
たった一言でも、愛のある言葉をかけられたら。
ぎゅっと抱きしめてあげられたなら。
私の今の状況だと大切な人を遺す未練や悔恨もまた想像できる。
会えなかった両親と過ごす事で、今まで空っぽだった気持ちを満たされる孤独な男を主演のアンドリュー・スコットが繊細に演じています。
大切な人を残して逝く親の想い。お父さん役ジェイミー・ベル(「リトル・ダンサー」のあの子がお父さん役だなんて私も年取るわけだ)お母さん役クレア・フォイも情感溢れててとても良かった。
また謎の隣人を演じるポール・メスカルの憂いのある表情も素晴らしく。この俳優さんの無言の時に目で語る雰囲気がとても好きです。
英国インディペンデント映画賞でも作品賞・監督賞・脚本賞・助演男優賞(ポール・メスカル)・撮影賞・編集賞・音楽監修賞など、主要部門を独占する最多7冠。
日本の公開は4月24日です。
ちなみに、今週末は役所広司さん主演の「Perfect days 」を観に行く予定でとても楽しみです。