「日本人のママは日本に帰ったら?」からの考察。

おはこんばんちは。飯塚です。

なんだかすっかり秋です、こちら。もうトレンチコートとかニットコートとか着ても普通な感じで。

日が暮れたらグッと冷えてモコモコなガウン着用してますよ、朝晩の冷え込みは10℃以下。

紅葉する木はあまりないのでたまに見かけると「綺麗だなぁ」とパチリ。

今や世界中で話題にならない事がない移民問題。

日本も然り、ですが、ヨーロッパ、特にフランス、ドイツ、イタリアを始めとした大陸はアフリカ圏からボートで移民が絶え間なく押し寄せてくる為、どこも切羽詰まっている状況。

イギリスはここ数年、新生児の男児の名前で一番多いのがムハンマド、なのはもう話題にならないくらい定着している。イスラム圏の人達がいかに人口を占めてるか、という事。

左に振り切れたかと思えば今度は右に動く世論。

歴史は繰り返す、それがたとえ残酷な現実だとしても。

2012年アウシュヴィッツ収容所

私が初めてイギリス、フランス、イタリアを旅した頃、「移民問題」が今ほど問題にはなってなかったけれど、それでもいわゆる「欧米人」以外の人種の多さには驚いた。

アイルランドもダブリンは人種も様々だけれど私のいる田舎の村はアイルランド人ばかりだった。それでもここ数年確実に黒人や中近東、インド系の人はは増えてはきてはいる。

ただ、私の住む村に東アジア系は私と韓国系アメリカ人女性1人しかおらず、年齢も背格好も似ているからかたまに彼女と私を間違える人もいたり。

他人から見ると私は娘の母親に見えない。

子供達、「ハーフ」と一言で言っても見た目が長男はミックス、次男はまるで純日本人、娘はヨーロッパ人、と面白いくらいにバラバラで。

娘っ子だけ髪の色も質も違う。

こちらで公園で遊ばせていても時々、

「この子はあなたのお子さんですか?」と聞かれるくらい。要は「あなたはベビーシッターで他人ですよね?」との意で聞いてるくらいに娘はアジア人要素が薄い。

夏に4歳になったばかりの娘、毎日のように

「私は何人なの?アイリッシュと日本人?ダディは日本人ではないの?ママは日本人なの?なんでアイリッシュじゃないの?」

「なんで私の髪とママの髪全然色違うの?」

国籍、人種問題、自分がいる国、日本があることを問い続ける。

ご近所さんも、お友達も家族もほとんどみんなアイリッシュ、幼稚園には英語が苦手なウクライナ人とブラジル人がいるけれど、ママみたいな「日本人」はいない。

日本人のおじいちゃんとおばあちゃんは「日本」に住んでるの?

「日本人」「アイリッシュ」の国籍って何?

日本人は日本に住むの?

アイルランドはアイリッシュが住むところ?

のような事を4歳になったばかりの子の思考はぐるぐるしていたのか。

ある日曜日の朝、朝ごはん食べながら、いきなり

「ねぇ、ママは日本人なんでしょ、髪の毛も目も肌の色もアイリッシュじゃないよね?一人だけ髪の毛が黒いよね?アイルランドに住むより日本に住んだら?ママはここに属しちゃいけないんだよ」

などと言う。

家族全員で一瞬時間が止まった。

夫は

「おいおい、ミニ・トランプだな。そんな発言を母親にするのか」と苦笑い。

私は

「えー、そうなの?じゃ日本に帰ろうかな。Mちゃんはアイリッシュみたいな見た目だから来ちゃダメってことでしょ、お兄ちゃんはママと似ているから一緒に日本に帰ろうかな。あなたはダディとアイルランドに残るんだね」

などと言ってみると。

「嫌だ!私もママと行く!やっぱりママ日本に行かないで!」

今まで他の子達はこういう事は言わなかった。

そんなに「国籍」や「アイリッシュの見た目」「日本人な見た目」を気にしなかった。

子供の素朴な疑問はある日突然斜め上からやってくる。大人が適切な答えの用意できていなくても。

異種への違和感、自然な事なんだなぁ。

北極圏に生息するのはシロクマ。ヨーロッパ、アメリカ、日本に生息する茶色のクマ、みたいな認識なんだろう。

子供の発言をSNSで綴ったら「バカ親認定」される。

私にとっては4歳になったばかりの子のこの発言は「日常で起きた面白い事」でこのエピソードをThreadsというSNSで書いたらまさかの炎上となり。わりと袋叩きに遭いました。

◯「オタクの子、幼稚園で友達に国に帰れ」っていじめられてるんじゃない?心配しないなんてバカな親だね!

◯え?こんな差別的発言許すとか躾ヤバいね。あんたの子供は差別主義者だよ。

◯子供の差別的発言を笑ってる家族、マジでやべえ!

◯あなたのしつけと教育が出来てない証明ですね!

要約するとこういう事を一斉に言われて…驚きました。

あのさぁ…。

我が家の10歳児が同じ発言をしたら私も全く笑えないし問題だなぁと深刻に受け止めますけど。

4歳の、アイデンティティに目覚めて「国籍」と「国」の定義に気づいた幼な子の素朴な疑問なんですけど?

いや。そんな事情、SNSの正義感を振り翳した「けしからん奴を袋叩きしたい民」には通じないのだった。

「バカな差別主義者の親がここにいます!さぁ、みんなで教育して差し上げましょう!!」

と、ここぞとばかりに非難する。

この人たち…大丈夫かなぁ。

私は逆に心配になりました。

ある人には

「何か気に触りますか?あなたはしつけを間違ってますし、SNSは不特定多数の意見がくる場ですよ」

などと言われたので、私もはっきりと

「そうですよね、SNSは現実世界で不満を溜めている方がネット上でけしからん奴を祭り上げて叩いて優越感に浸る場ですよね。私は「国に帰れ」なんて差別的発言を容認しませんよ。4歳になった子が自我に目覚めた話をしているのに、鬼の首を取ったみたいに非難するのはそんなに楽しいのでしょうか。」

などと反論したらブロックされて。

とはいえ。

海外在住日本人の方々からは似たような事をお子さんに言われた経験談をした方もいたり、私に思いを寄せてくださり気遣っていただいた方もおられて救われた想いがしました。

ちなみに、この非難に対して私の

「異種に対して違和感を覚えることは生物として先天的かつ自衛本能で自然な事だ」

との見解にもだいぶ拒絶感や嫌悪感を覚えた方がいたようで。

「あなたのその「差別意識」があるから子供の教育ができないのだ!!」とまた正義感をグリグリ押し付けようとしてきて辟易しました。

えぇ、世の中には価値観が合わない人はいますよ、そりゃ。あちら側から見た私も「とんでもない考え」な変な人扱いされてるんでしょうけどね。

もうある意味両思いだからお互い近寄らないのが一番ですわ!

インドの犬社会で「差別」を目の当たりに。

差別の根源は人間に限らず生物が生き抜く上でDNAに組み込まれているのだと私は元々思っていた。

それを裏付けるようにインドのバラナシで起こったある事が私の中で強烈で。

ガンジス川で朝陽を拝み、いつものように広場でチャイを啜りながら人や動物の賑やかな往来を眺めていた。

ガンジス川のほとりでサンダルも直してもらいました(もちろん有料)

誰かが路上に撒いた餌に野犬があっという間に群がり6、7匹が貪り食べているところに、1匹の犬がノロノロと現れた。

その犬は他の犬とは違い身体のあちこちから毛が抜け落ち、骨が浮き上がるほど痩せこけていて、明らかに何か病気らしい無残な姿だった。

その犬が餌に食いつこうとするや否や、それまで食べ物しか目に入ってないように見えた犬達が一斉に顔をあげ牙を剥き出しその見窄らしい犬に吠えかかり威嚇し始めた。

その病気のような犬は食べ物にありつけないまま、か細く「キャン」とだけ吠え、尻尾を巻いて力なくその場を後にした。

哀れな犬の後ろ姿を見ながら「自分達と違う容姿」を追い出すのは生物が生きていく術なのだ、と思い知らされた。

あの犬が持つ病気が感染したら自分の命も危うい、そんな者と食を共にする訳にはいかない。

犬の写真なかったから牛の写真

「醜いアヒルの子」を教育する訳。

アルビノに生まれた人はアフリカでは虐殺される、という話も「異種への恐怖」からだろう。

「病気」と「人種」はもちろん別ですが。

実は、うちの長男も2歳の時に黒人を初めて間近で見てギョッとして怖がり泣き出しそうになり私も少し慌てた事がある。

見たことがない肌や髪の毛、目の色…子供達は不思議に思い恐怖心を抱くのは自然な事なんだ、と気付かされた。

世間に出回る美談、猿が子犬を育てる、みたいな話はあるけれど、それは一般的ではないからこそ美談。

「差別はいけない」

何世紀も言われながらもそれでもなくならない。なぜなら生物は本能的に異種を排除しようとするから、と私は思う。

その差別を無くすには、教育と理性なのではないか、と。

アルビノは感染する病気ではない、という知識が必要、とか。

アイルランドは「アイリッシュ」だけが住む場所というわけではない。

日本は「日本人」以外も住めるのだよ。

見るからに外国人だからといって「国に帰れ」と言ってはいけない、「国籍」と「住む国」は必ずしも一致しない、などを教えないといけないんだな、と改めて思えた出来事。

とはいえ、私こそがここではマイノリティで差別される側なんですけどね。何度か嫌な経験してますし。

こちらでも外国人排斥の動きが日に日増して新聞からそれらの記事がない日などない。

本能を意識しながら理性や教育で超えられるのか。世界はそれを超えたいのか、どこにいくのか。

4歳児発言により、ずっとこのせめぎ合いが続くのだろうなぁ、と思わされたのでした。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。