彼らの声を覚えておこう。

おはこんばんちは。飯塚です。

気づけば8月,夏休みも折り返してホッとしています。

今年はいい夏、とはいえ先週から少し涼しくなった。ここ数日はビーチ行ってません。

景色がすっかり秋になってきました。

家の周り、全部これ。

結局世間はゴシップが好き。

ちょっと前に、英語圏を席巻したニュースご存知ですか?

アメリカであったコールドプレイのコンサートで大型スクリーンに映し出されたカップル。

よくスポーツの試合で観客席のカップルを映してキスする、あれです。

ライブ中自分達がカメラに撮られた事に慌てて、隠れた。

この人達浮気してるカップルだ!というのがバレて、名前や会社名、役職(男性はCEO)まで特定される。その一週間か二週間、本当にFacebookの英語圏のニュースフィードがこれ一色になってた。

二人共会社から解雇。男性は家族も別居。

男性側がコールドプレイを訴える、と表明。→イマココ

新聞の記事にも結構出ていた。

特にセレブリティでもなかった名もなき二人の不倫からのリアルな人生転落劇にアメリカのみならず世界中が好奇の目を向けて好き勝手にコメントした、妙なニュース。

本当にくだらないんですよ!でも世界中が湧き上がって逐一情報アップデートされて、なぜか私も知ってんだよ。なんなら我が家も夫と話題にしたし。

「あれは何がおかしいって特に男の慌てっぷりが滑稽だから。あんなのたくさんのカップルがスクリーンに映るんだし、堂々としてれば誰も気にしないのに、わかりやすいくらいに隠れたりするから「私達浮気してるカップルなんです」ってバレて「この人誰⁈」ってなった。愚かで浅はかな成れの果て」

カメラに映るまで二人は幸せの絶頂だったのに。家族に隠れてコールドプレイのコンサート、ずっと楽しみだっただろう。

それが文字通り、一瞬にして全てを失う事になるなんて。

自業自得そのもの、世間は同情どころか嘲笑う。自分達で始めた不倫でしょ、と。

代償大きすぎたよね。

一番の被害者は彼らの家族。

なんの罪もない配偶者や子供達が恥をかき、家族は離れ離れになるなんて。

それで、また思い出してしまった。

親が離婚した時の子供の心情を聞いたことありますか。

世界旅をしていた時、何が楽しかったかって各国の人と話ができた事。

宿や現地ツアーで一緒になった人達との会話はいつも新鮮で意外な発見があった。一人旅だからこそ、たくさんの人と出会えて、ご飯を食べたりお酒を飲んだ。

その中でなんとなくずっと記憶に残っているのが、アルゼンチンで出会ったオーストラリア人女性との会話。

たまたま6、7人といた会話で両親が離婚してるか、という話題になり、その場にいた私以外全員は親が離婚をしていた。

ハローキティが大好きで手首にに小さなキティちゃんのタトゥーまであるオーストラリア人女性は私に向き合い

「ねぇ、日本人はそんなに離婚しないの?両親揃っているのが普通なの?」

と聞いてきた。確かに近年は離婚率は上がっているけれど私世代は親が離婚している人はクラスに数人いるくらいで稀だった、というと

「そうなんだ、日本はやっぱり離婚率少ないんだね。うちの両親は子供の頃離婚したんだよね。私だけじゃなくて友達もシングルペアレントや離婚の後再婚した人は多いよ。日本はやっぱり結婚したら恋愛とかしないの?その方がいいよね。なんだろ、欧米って親でも自分のやりたい事していい、みたいな感じで結婚して子供できても恋愛とかしちゃうのかなぁ。自分達が幸せになればいいの。でもさ、子供の事なんて考えてないんだよ、私は凄く傷ついたよ。本当に嫌だったの。親がさ、ある日好きな人出来た、とか。家に連れてきてね、子供心に凄く嫌な思いしたし、友達も同じこと言ってるし、大人になっても忘れないし。あなたはそういう思いしなかったなんて幸せね。羨ましい。」

南米を3ヶ月旅しました。

それまでも異国の人達と生活習慣の違いを話し合って面白がっていたけれど、「親の離婚」への赤裸々な心情は後にも先にも彼女の告白だけで、悲しげで心底私を羨んでいる表情も含め忘れ難いものとなった。

確かにヨーロッパのあちこちに住む日本人から集めた情報だと、離婚率は日本の比ではないくらい多いそう。

統計は色々あるのですが。ヨーロッパは結婚せずに子供を持つことも普通なこともあり、このデータだけ見たらそんなに極端に変わらないよね?とも見える。

ドイツでは「3回目の結婚相手が本物の相手」という説もある、とか。

アイルランドの家族事情は変動的。

元々カトリックのアイルランドは1995年まで離婚は法律で許されていなかった。離婚できるようになって30年、手続きの煩雑さとお金がかかることもあって離婚率は他ヨーロッパ諸国より低い。

結婚せずにパートナーと子供を持つのも割と普通なので「交際する」ことと「別れる」ことの垣根は低くなる。

子供達の保護者の離婚(divorce)、というより離れて暮らす(separeted)と表現し、新しい彼氏や彼女がいるなど見たり聞いたりすることがもはや日常だ。

日本の小学校を体験した長男も

「日本の小学校の友達はみんなお父さんもお母さんもいるかな、アイルランドの学校の友達の方がシングルペアレントだと思うし、新しい彼氏とかパートナーの話する」

平日はお母さんと、週末はお父さんの家に行く、とかね、そんな話を聞いたりします。

傍目には、お父さんやお母さんの新しいパートナーと楽しそうにワイワイ楽しそうには見えるけれど。

あれはまだ長男が6歳くらいだったか学校帰りに公園で遊ばせていた時、息子と同じ幼稚園だった女の子もたまに公園に来ていた。

彼女のお父さんはいつも車の中でタバコを吸いながら待っていた。

彼女は公園内で私についてきてふと話し出す。

「ママね、新しい彼氏ができたの。最近彼氏はよく家に来るんだけどキッチンでね、キスとかしてるんだよ。本当気持ち悪いの、すっごく気持ち悪い!キスしてんだよ?気持ち悪いよね。いつも早く帰ってくれないかな、って思うし、来ないでほしい」 

そうか、車で待つお父さんとは離婚してるのか。ママは新しいお相手がいるんだね?

顔を歪ませながら、

「disgusting !気持ち悪い」

と呟き続ける少女。

生理的に受け付けないのに、気持ちの持って行き場がないんだな。

えぇ…と。

これって、どう返してあげるのが正解なのか?

こういう時にかけるべき言葉が見つからず、とにかく聞いてあげて

「そうなんだね」

くらいしか言えなかった。

だって「本当だよね!最低だな、気持ち悪いね。」とか言っていいのか?

この子は、お母さんやお父さんには言えない本音を、全く関係ない私だから言えるんだろうな。

不満が溜まっていて気持ちを吐き出したい。

お母さんや彼氏の前では作り笑いをして頑張っているんだろう、などと想像しただけで胸がキュッとなり、あの時のオーストラリア人の彼女の言葉がまた蘇った。

息子の同級生のお母さんも、中には奔放な人がいて、浮気がバレて離婚に至り、新しいパートナーができるのは珍しくない。豊胸手術とか整形もし始めたりで「ほおぉ」と観察しがいのある人もいる。

しかも、全員知り合いみたいな小さな村で子供の同級生の保護者同士の不倫みたいなのをするのは、どういう神経なのだろう、と疑問しかない。

当然、不倫ネタは噂好きな田舎の人達の格好の餌食でしかないわけで。

もう、みんな面白がって話してる。田舎の人間CCTVの精度を舐めたらいけない、本当に怖い社会。

仮に私が不倫なんてしたらその日のうちに夫の家族に知られるはずだ。

えぇ、私はこの小さな社会で品行方正に生きていくしか道はないのだ。

私も友達に「離婚」をススメたことあります。

私は

「離婚」=悪い

だとは言わない。

人の事情はそれぞれだから。

例えばDVや浮気癖が酷い人は見限って離れるのが一番だと思うし、モラハラにも我慢はしなくていい、と考えている。

それに、誰かを本気で好きになってしまい夫婦仲が修復不可能になってしまえば、別離は避けられない。

確かにあの時「永遠の愛を誓った」けれど。

ふと、漏らした「たった一言」だけで、愛も絆も崩れる事があるのが人間関係。

一度壊れたら修復は不可能だもんね。

私だってわからない。

一週間後に雷に打たれるような恋に落ちる可能性がない、なんて言えない。

夫だって他に好きな女性ができるかもしれない。

いや、わからなくはないんです。

だって楽しいよねー、恋愛。

不倫はちょっとスリルがあって、秘密のドキドキみたいなのも、つまらなかった日常が少しキラキラしちゃうんだろう。

新しい化粧品とか、なんなら下着や洋服も買っちゃうだろうなぁ!とか。

でも。

浮気=気持ちが浮ついただけ。

火遊びが、火消し出来ない大火傷になる可能性大。

そんなことで全てを失い一生後悔するの、最高に馬鹿げてる。何より子供達の心情を考えたら、超えてはいけない一線なんだよ。

一人目の結婚相手とどうしてもうまくいかないならば二人目、三人目の結婚相手が本物、という事もあるかもしれないけれど。

子供達がいて、家族を作った以上、浮つくのも危険。

ときめきはテレビや映画のスターくらいにして。

旅で出会った女性や公園で女の子が吐き出した本音はずっと胸に刻んでおこうと思っている。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。