ハノイに来ています。

初めてハノイを訪れたのは、一昨年の12月。夏のハノイを体験するのは今回が初めてです。

成田から5時間半、ノイバイ空港に到着し、飛行機の外に出ると湿気をたっぷり含んだ生暖かい空気がモアッと流れてきました。

ソウルからやってくるおかっぱキヨコよりも30分早い飛行機で到着して、一旦外に出る。以前旅をした、ウラジオストクでもそうだったのだけれど、ノイバイ空港では到着出口のところで、家族や恋人を迎える人たちのための花束が売られている。ひまわりやバラの花束を手に愛しい人々を待つ姿に出会うと、こちらも自然と笑みが溢れる。

ホテルで予約してもらった車の運転手さんと合流して、papagoを使ってやりとりをしていると、入国審査で時間がかかっているとおかっぱからメッセージが入る。

「僕は外で待っているので、あせらずゆっくり来てください」と翻訳された携帯の画面を見せてくれる運転手さんにぺこりと頭を下げ、アライバルホールでおかっぱを待つ。

ひまわりの花束を手にもった青年がなん度も背伸びをしながら、誰かを待っている。どこかの国から到着した人々が、どどっと外に出てきたタイミングで左手に移動した。たくさんの荷物が積まれたカートを押しながら、黒髪の美しい少女がキョロキョロと誰かを探している。黒髪の少女の横に静かに立って、同じように人を探しているふりをする男の子。二人で同じ方向を見ながら、人を探す動作が繰りかえされている。痺れを切らした男の子が少女に花束を差し出す。「わぁ!」と目を丸くし、びっくりしながら花束を受け取って、青年をギュッとハグする女の子。

たくさんの人が行き交う中で、二人のいるスペースだけは、スローモーションで動いているようだった。

キュンキュンする映画のような場面を目にして、携帯にポツポツメモをして顔を上げると、少し先で見慣れた黒縁メガネのおかっぱがピョンピョン飛び跳ねながら、こちらに大きく手をふっている。無事に会えたねー!とハイタッチ。数分前に出会ったかわいい二人の出来事をおかっぱに話しながら、外に出る。すぐに運転手さんがこちらに気づいてくれて、おかっぱのスーツケースを手に取り、ゴロゴロと車まで運んでくれた。クーラーの効いた車が、大きな道路になめらかに滑り込み、ノイバイ空港がどんどん後ろに遠のいていく。

ソウルでのおかっぱのエピソードを聞きながら30分ほど車に揺られ、ホテルに到着。ホアキン湖のそばという条件で熱心に探したホテルは大当たりで、フロントはいい香りがした。バスタブもある浴室がとても広い部屋は、お値段もとても手頃。レビューに並ぶ「朝食がおいしい」というコメントに、明日の朝が待ち遠しく感じられる。

早々に荷物をオープンして、外に出る。どの国でも汁物が一番なおかっぱのために、一食目は牛肉のフォーと決めていた。湖の周りを散歩しながら、ホテルと逆サイドにあるPhở Thìn Bờ Hồを目指す。グーグルマップに導かれて到着したのは小さな路地。店舗があるようには見えないのだけれど、路地の上の看板にはPhở Thìn Bờ Hồと書いてある。路地の中を覗いてみると、左手には厨房があって、その奥にはテーブルと小さな椅子が並んでいた。右手をピースの形にして、自分の息子と同い年くらいの青年にフォーをふたつお願いする。座ってフォーを待っていると、調理の様子を写真に撮っていたおかっぱが「わー!」と歓声をあげて、これ見て見てと私を呼んだ。

2杯目のフォーの麺がどんぶりに盛られ、ハーブとニラがたっぷりのスープに、薄切りの牛肉が半生の状態で乗っている。その上に熱々のスープがかかると、肉の色がさっとかわってフォーの出来上がり。パチパチと手を叩いていると、店にいる全員がそんな私たちの様子を見て笑っていた。

レンゲでスープを一口。透明な牛骨のスープにニラとハーブの香りが口の中いっぱいに広がる。これは旨いと二人で顔を見合わせる。火を通しすぎていない肉はとても柔らかく、牛肉特有の臭みもない。肉を多めに箸で挟み、米の麺と一緒にすすって、しっかりと数回、噛む。ハーブの香りと相まって、牛肉の味が上品で優しく感じられて、一口、もう一口と箸を休まず働かせることになる。

あっという間にどんぶりの中身を平らげる様子を見て、スタッフの男の子が二人であははと笑っている。おいしいを意味する「Ngon」と声に出すと、ケラケラと笑いながら、それはこう発音するんだよと、「Ngon」の正しい発音をなんども繰り返してくれた。箸が転んでもおかしいお年頃。えへへと笑いながら、世話を焼いてくれる若者の姿に釣られて、我らもあははと笑う。

旅の一食目がおいしいと、気分がいい。牛肉のフォーのおかげで、今回の旅もいい時間になりそうな予感。

今週も1週間おつかれさまでした。5月から10月までが雨季のハノイ。今の所、雨には降られず快適に旅を続けていますが、暑い!東京もそろそろ梅雨入りですね。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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