計画通りに行かないおもしろさ

「テストまでの2週間、勉強の計画表を書かないといけないんだ」

この春中学1年になった息子。6月3日に行われる初めての中間考査にむけて、計画表を書くという宿題が出たようです。自分が中学の時には中間テストと呼んでいたもの。「考査」と言われると、若干緊張感が増します。

「計画表って何々?」とプリントを見せてもらって、今の学校はここまでサポートしてくれるんだと驚いたのですが。勉強の計画表を、学校が準備してくれているんです。5月20日〜6月3日までの2週間が表になっていて、英語・国語・数学・理科・社会と自分で色分けを決める。「今日はこの科目を何時間勉強する」と自分で決定して、時間の欄を塗りつぶす。実際に実施できたかどうかもチェック。計画の下の段にある実施の欄。国語は赤で、数学は緑でと塗りつぶしていく。

「あれ、今日は英語やらなくて大丈夫だったっけ」

そう、息子に声をかけながら、自分の中国語の勉強の進度が、牛歩すぎるほど牛歩なことを大反省。中国語HSKの試験は7月にせまっている。あー、やらなきゃー。

中間テスト前。中学生の自分もこんな感じで、あー、やらなきゃと唸っていた。机の周りをぐるぐる歩き回りながら眠気を吹っ飛ばす。試験の前の晩は、徹夜がお約束でした。

中国語の学習、今まではアプリの辞書を使っていたのですが。勉強に本腰を入れようと思うと、どうにも紙の辞書が欲しくなって、神保町に買いに行くことにしました。辞書にチェックを入れたり、書き込んだりすることで、勉強をやっている感が増す。自己満足ではあるけれど、「ちゃんとコツコツやっている」のを目で確認できること。やる気の連鎖を起こすためにはけっこう大事なんですよね。こどもの勉強の計画表を見ながら、そのことを思い出させてもらいました。

中国語の勉強をスタートしたばかりの今年1月、初めて訪れた内山書店。中国・台湾・香港で発行される本と、日本で発行される中国やアジアに関する書籍を販売しているお店です。内山書店さんは、神田のすずらん通りの真ん中にありまして。神田のすずらんの街頭、チェックしてきましたよ。先日訪れた経堂のすずらんとは形が違って、こちらは少しモダンです。

雨がしとしとと降っている神保町。古本の匂いと草木が雨に濡れる匂いが混ざって、時折ぷーんと香る。ここは雨が似合う街だと思うのは、私だけでしょうか。交差点から4分ほどで内山書店に到着しました。

日本が好きな台湾の編集者さんたちが作っている雑誌「秋刀魚」が、入ってすぐ右の棚にずらっと並んでいます。瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』中国語版が平置きされている。中国語になると「接棒家族」になるのがおもしろい。辞書を見てみると、接棒=バトンタッチの意味になるそうです。

小説コーナーの裏側に日本語→中国語、中国語→日本語の辞書が並んでいました。その向かいの棚には中国語→中国語の辞書がずらり。しっかり勉強して、中中辞書で調べられるようにならなければ。道のりはだいぶ遠いけれど。

新しい言語を学ぶ時、辞書はどんな基準で選びますか?

今はアプリの辞書が充実しているから、持ち歩きに便利な小さいものという選択肢はなくなる。収録されている総項目数のできるだけ多いもの。ふむふむ。これは必要な条件かも。出版の年数が現在に近く、新しく登場した言葉も調べることができるもの。どの国でもそうですが、言語はどんどん変化していく。新しい言葉を調べることができるという条件は、とても大事です。使用頻度の高い言葉がしっかり色分けされていたり、用法が詳しく解説されているもの。見やすさも重要ですよね。

気になる辞書を何度もめくって。最終的に教科書の老舗・大修館の中日大辞典と三省堂のクラウン中日辞典の2択に。出版の年数は2年古かったけれど見やすさを優先してクラウン中日辞典を購入。語句の解説も丁寧です。

やっぱり紙の辞書はいい。最近よく調べている「有」yǒuという言葉。持っている、ある、いる。パッと思いつく以外にも、動詞の意味だけであと7項目。「有」を使った熟語も合わせると5ページというかなりの量が割かれている。

同じ「yǒu」の拼音を見てみると。友人を意味する「友」、導く・いざなうを意味する「羑」など、9つの漢字が掲載されていた。アプリで調べてしまうと、この寄り道がない。寄り道をしないで答えにたどり着くことは、時間の短縮にはなる。でも、知らなかったことすらわかっていなかったことに新たに出会えて、発見が次々生まれるのは、寄り道があってこそだ。あのページのあの下にあった漢字も同じ拼音だったと、辞書の映像で記憶を辿ることもできる。紙の辞書を泳ぐ気持ちの良さを久々に味わう。

辞書を手にして、店の外に出る。道路に当たる雨粒の音。車がシュー、シューとリズムよく通り過ぎる音。雨の日は匂いも良いけれど、街の音もいいものだ。雨足が強くなってきたけれど、計画通りに事務所に戻るのはつまらない。寄り道をして、水道橋の方まで歩くことにしました。

わたしも試験までの計画表を作らないと。勉強中も寄り道だらけで、計画の通りには行かないはずで。結局、何度も作り直すはめになるのだろうけれど。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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