旅のしたく。

しばらく出番のなかったパスポート。今年の7月13日に期限が切れる。2012年に更新をした時には、自由に飛び立つことが困難な時間が未来に存在することは予想もしていなかった。

今年に入ってから、早めに更新をしてしまおうと何度か思い立ったのですが。外務省のパスポートに関するページを開いて更新に必要な書類を確認しては、仕事の都合などやんごとなき理由のない者は、更新をもう少し先にしたほうがいいのかなとページを閉じることを繰り返す日々。

残存有効期間が1ヶ月を切ったことと、もしかしたら来月の末頃には旅を再開できるかもというほのかな期待が生まれたので、とても久しぶりに東京都生活文化スポーツ局旅券課に出向きました。

都庁に向かう大江戸線内の表示。旅という選択肢が自分の中から消えてしまっていた時期には気にすることのなくなっていた中国語やハングルの表記が今日はやけに目に入ってくる。あともう少ししたら、ハングルの溢れる電車で移動をして2年ほど見ることのできなかった街の景色を見ることができるかもしれない。パスポートの更新に行くだけで、こんな風にワクワクする気持ちになるなんて思いもしなかった。

次は終点「都庁前」

都庁前駅を降りて、「旅券課(パスポート)方面」という文字を見るだけで心が躍る。旅の入り口はこちらですと手招きをされているような気持ちに。

パスポートの更新に来る人、新しく申請する人。平日の午後14時頃の旅券課は予想していたよりも人がたくさんいました。パスポート用の写真を撮影するために、旅券課の向かいのお店にまず向かう。長く待つということはないけれど、写真を撮りに来る人は途切れずやってくる。

更新するための申請書を記入。隣のブースでは高校生の男の子がお母さんと一緒にパスポートの申請書を書いている。「次はここの欄に名前を書いて」男の子がボールペンを走らせる。留学に行くためなのか、お父さんの仕事に家族でついていくのか。どんな目的かわからないけれど、初めてのパスポートってドキドキするし嬉しいよね。私が初めてパスポートを作ったのは大学生の時だった。ニューヨークに住む友達のおじさんの家とボストンに住む私の叔母の家を女子二人で訪れる旅。出発は別々、現地集合。途中のトランジットは自分の乗るべき飛行機のアナウンスを聞き逃さないうように緊張でガチガチ。ジョン・F・ケネディ国際空港に到着した時の霞のかかったようなクリーム色の景色は、今でも時折思い出す。

最初は紺色の5年パスポート。そこから2回10年パスポートを更新した。

申請書を提出して、パスポートの引換書を受け取るまでの時間。ベンチに座ったらすぐに名前を呼ばれるくらいスムーズだったけれど、人が途切れることはなく。この空間にいる人たちが、自分と同じようにちょっとずつ旅のしたくを始めているように思えて、また少しだけ体温が上がった。

「新しいパスポートの受け取りは6月2日です。この引換書と手数料、丸で囲んだ金額をお持ちくださいね。」

5月24日に駐日本国大韓民国大使館のHPで「一般観光査証発給再開などのご案内」が発表され、6月1日から韓国は観光ビザの申請を受け付けるということだった。申請に必要な書類を東京の大使館のページで見ると、ビザの発給までには3〜4週間の所要時間がかかるため、1ヶ月後の航空券のコピーを提出しなければならないと書かれている。

6月1日から90日までの観光ビザが発給されるらしいというニュースは5月に入ってから耳にしていたのだけれど、名古屋の領事館のHPでは申請から2週間後以降の航空券提出、福岡の領事館では既に申請が始まっていてビザの発給までにはこちらも2週間ほどだという情報がTwitterにあがっていた。地域の領事館でビザ発給までの時間が変わってきてしまうのは、思えば当然のこと。人口の数がそれぞれ違う。東京の大使館にはビザの申請が殺到するのも簡単に予想がつく。

6月2日にパスポートを受け取っても、行けたらいいなと想定していた6月23日に旅を再開することは難しいことがわかって一瞬しょんぼりしたけれど、おとなしく順番を待って、旅が再開できることを心待ちにしよう。たのしみが少し先に伸びるだけだ。できる準備をひとつずつ重ねながら、刻一刻と変わる状況に合わせて、やわらかくその日を待とう。見えないだれかに迷惑をかけることにならないように、感染対策をしっかり続けながら。それも自分のできる旅のしたくのひとつなんだよなと改めて思う。まじめかというツッコミを入れたくなるタイミングだけれど、まじめな話。旅を再開したいなら必要なことだ。

今週2日続けて訪れた浅草寺、仲見世通りの一本裏側。思いついたことをどんどん実現していくかっこいいほぼ日の元同僚。バンブーカットの順平くんの新しいお店『梅と星』が6月6日にオープン。and recipeの山田がレシピや店舗の立ち上げのお仕事をさせて頂いているので、プレオープンの打ち合わせに。

羽釜で炊いたほかほかのごはんと、全国から集めたごはんのおとも。これから浅草の名物になるといいなのうめ稲荷。立ち喰い梅干し屋の各種梅干しと梅酢で作った万能調味料の煎り酒「よしなに。」、定食で食べられるごはんのおともの物販もあります。

快晴の浅草は活気があって、屋台のラムネがどんどん売れていく。仲見世通りを歩いていると、ベビーカーを押しながら歩く海外からの観光客らしき人たちを何度か目にしました。パスポートやビザ、各種証明書以外にも以前とは違う「旅のしたく」で必要なものを考えながら、こんな風に海外の人たちとすれ違う回数が少しずつ増えるといいな願う。

日本各地のお客様はもちろん、海外から観光に来たお客様にもきっと喜んでいただけるお店『梅と星』。カウンターにたくさんの海外のお客様が座ってくださる未来を想像しながら、自分もコツコツ旅のしたく。最近サボりがちな語学学習にも喝を入れるべく、資格所得の有効期限2年を過ぎた韓国語能力試験の予約も完了。仕事も語学も大事な旅のしたく。

昨日の豪雨とはうってかわって、今日は夏日になるらしい。太陽の昇る時間がとてもきれいな土曜の朝でした。

今日も読んでいただき、ありがとうございます。みなさまどうぞよい週末をお過ごしください。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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