街の気配。

今週も受けてまいりました。ニホンコン先生の中国語の授業。新百合ヶ丘、駅の2階にあるタリーズコーヒーのいつもの席。

「今日は成語表現を勉強するよー。」

色にまつわる表現も面白かったけれど、中国のことわざや格言が、日本語とどんな風に違うのか、はたまた似ているのか。その差異がおもしろそう。

「まずは数字にまつわる成語からね。『独一无二(dúyīwúèr)』これどういう意味でしょう」

「无」は「無」の意味だったけれど、うーんどういうことだろう。

「ひとつしかない、ふたつとない。って文字通り読んでいくと『唯一無二』ってことがわかるよね。」

なるほどー。そのままの漢字の意味で腑に落ちる成語だ。

紅葉とともに秋がやってきたと思ったら。

「数字の一・ニが入る成語の次は、三・四が入っている成語。三と四がことわざの中に入ると、どうしようもないっていう意味を含むの。面白いよね。例えば『不三不四(bùsānbùsì)』で、ろくでもない・まともじゃないっていう意味になる。」

「三でも四でもないものが、六でもない。」と数字が続くときれいだったのですけれど。「ろくでもない」の「ろく」は、六ではなく「陸」でした。陸は土地が平らなことから、性格がまっすぐなことをさす。そのまっすぐな「陸」がない→曲がっている→ろくでもない。

三と四の次は、七と八が成語に入っている言葉を学ぶ。「八って中国で最上級にいい数字だったよね」「そうなんだけれど、七と八が入るとね、心がざわっとする意味になるの。例えば、『七上八下(qīshàngbāxià)』いても立ってもいられないとか、気持ちが複雑で落ち着かないっていう意味になる。」

「七上がって八下がる。文字の通り、心がアップダウンして落ち着かない様子が、文字と結びつくね」

七・八の数字の後には、十が入る成語がやってきました。

「『十全十美(shíquánshíměi)』これは文字から、完璧な感じが伝わるでしょう?」

全て美しい=完全無欠の、非の打ちどころがないという意味でした。これは文字からばっちり意味が伝わってくる。

店内にもうクリスマスツリー。向かいのケンタッキーでは、クリスマスのパーティーバーレルの予約受付が始まっていました。まだ行かないで2021年!

数字に関する成語のあとは、動物の入っている成語を学ぶ。

『对牛弹琴(duìniútánqín)』これは分かりやすい。牛に琴を弾くってことは、豚に真珠、猫に小判と同じ意味だね。登場する動物が「牛」になるのがおもしろい。

続いて、『如虎添翼(rúhǔtiānyì)』。もしも虎に翼がついたら、ってことは最強ってこと?そうそう、「鬼に金棒」って意味。ちなみに「鬼」の概念が日本とは違っていて、中国だと「お化け」を意味するの。ってことは、我らが子供の時に流行ったキョンシーも中国では「鬼」だったのかな。あれは、中国じゃなくて台湾制作の番組だったのだけれど、キョンシーは繁体字で「殭屍」と書いて、硬直した死体を意味する。確かにお札を貼るとキョンシーたちが硬直してぴたっと動きを止めていたよね。

雑貨屋さんを覗いてみると、店内にサンタやスノーマンのオーナメントが点在していました。ネパールでつくられているオーナメントたち。我が家にも昨年買った同じオーナメントがあります。うちの子たちも、そろそろ出番かな。

キョンシーがぴょんぴょん飛ぶ姿を頭に思い浮かべながら漢字を見つめていたら、なぜかそれまで気にならなかった店内BGMが、おばけのようにすーっと耳に入りこんできました。

まだ11月も前半なのに。もうクリスマスソング!毎年、街の様相がクリスマスに変わるのって、こんなに早かったっけ。同い年のニホンコン先生とわたくし。しばしクリスマスに思いを馳せる。昔って、夏休みも年末も年始も。セールで季節を感じていたよね。いつその感じがなくなっちゃったんだろう。そういえば、デパートのイベント中心に、季節がまわっていたね。あぁもうクリスマスか、もうお正月だーって。

レッスン中、タリーズの店内ではかかりませんでしたが。クリスマスソングの王道といえば「All i want for christmas is you.」クリスマスという単語に反応して、脳内DJがもれなくマライヤの声をリプレイします。

クリスマスのスノードーム。中国語では「圣诞水晶球」というらしい。圣诞は聖誕、クリスマスの意味でございます。

マライヤ・キャリーの「All i want for christmas is you.」が流れると、同時に頭に浮かぶのが1994年10月20日 〜12月22日にフジテレビの木曜劇場で放送されていたドラマ『29歳のクリスマス』。山口智子さん、松下由樹さん、柳葉敏郎さん。トレンディドラマのゴールデンメンバーが出演していたドラマ。このドラマが放送されていた時ちょうど18歳だったわたくし。1994年の12月22日、大学の友達の家で行われたクリスマスパーティーのクライマックスは、全員で『29歳のクリスマス』の最終回を見ることでした。名台詞がたくさん登場したこのドラマの、最後の最後。画面にテロップでどーんとでてきたこの台詞、覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

「今、ここにいる自分が好きだから、私は、世界で一番幸福 絶対に! 絶対に! 絶対に!」

絶対に!絶対に!絶対に!の文字を見て号泣していた友人Aは、現在テレビのディレクターをしています。

山口智子さん、「十全十美」な女優さんだったなぁ。

「今年、初だ!」と友人に喜んでもらったおでん。きれいになくなりました。

秋が来た、11月が来た、と思っていたら、街の気配はもう12月。このままあっという間に2022年がやってきてしまいそうです。2021年にまだまだ、「恋恋不舎(liànliànbùshě)」(名残を惜しんで去るに忍びない)な思いがたっぷりですが、みなさま年末まで、どうぞたのしい日々をお過ごしください。

って、まだ11月半ばだってば!年末を迎える前に、まずはよい週末をお過ごしくださいませ。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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