場所を作る。

昨日はいろんなお酒をちゃんぽんしすぎたなと、少し重たい頭をあげて、ベッドから手を伸ばせる場所にあるカーテンを開けると、目の前には南山タワーに朝日がさして天辺が美しく光っています。

空を見上げると鱗雲が右から左へ走っている。布団をかけ忘れて眠ると、肌寒くて目覚める季節になった。街頭に立つイチョウの葉は飛び飛びに黄色く染まっているものもあって、ソウルにも少しずつ秋が訪れています。

「西村で場所を探しているんです」

そんな一言を聞いてから、まだ1年も経っていない。あっという間に場所を構えて、来週ギャラリーをオープンするナギョンちゃんが、親しい友人にお披露目の会をすると、日本に出張に来た合間を縫って案内状を持ってきてくれました。

日本の作家さんを韓国に紹介し、韓国の作家さんを日本に紹介する。日本の企業に勤めながら、少し先の未来には自分の好きな器や美術の仕事をしていくため、まずは陶磁器のキュレーターを目指して陶器のお店でも週末働く。そんな毎日を送っていたナギョンちゃんが東京からソウルに戻る前に出会いました。旅の相棒キヨコがand recipeのイベントに連れてきてくれてから、2年ほど。やりたいことをしっかり言葉にして、すぐに動く。その速度感がものすごく爽快で、話を聞くたびにこちらまで力をもらう。

夕方前にソウルに到着してギャラリーに向かうと、前日にソウル入りしていたキヨコの笑い声が聞こえる。ギャラリーをオープンするまでの準備の期間、ナギョンちゃんが自宅で開いていたクッキングクラスの生徒さんたちとあっという間に仲良くなって、数年来の友人のように笑い合っていました。

少し前の準備の期間にお邪魔した時にも、すでに素敵な空間になっていたけれど。レセプションの日を迎えて、置いてある器も作家さんたちの作品も自分の居場所をしっかり得たように見える。自信をもってそこでお客さんを待っているよう。手触りがぽてっと温かみのあるアイボリーの器を購入しました。

一通りお客さんたちが帰ってから、ギャラリーの近くにあるヤンニョムカルビのお店で夕飯。ナギョンちゃんをねぎらってのはずが、トングを離さないナギョンちゃんに結局すっかり甘えてしまった。

朝からお店を手伝っていたクッキングクラスの生徒さんたち二人と、夕食をご一緒したのだけれど、今では先生と生徒さんの枠を超えてとても仲が良いのだそう。「ナギョンちゃんのクッキングクラスに来る生徒さんたちは、みんなこういう感じなんです。ワークショップやこういうお教室っていろんな人が混ざるのが普通じゃないですか。やっぱり先生のキャラクターのおかげだと思うんですけれど、みんな気持ちのいい人たちばかり集まる。友達のように仲良くなった今も、料理のクラスは月一回かかさず受けているんです。」

昨年の秋の終わり、やっと韓国に来れるようになった最初の旅。ナギョンちゃんのお家に遊びにいかせてもらって聞いていたクッキングクラスの話が、ふわっと戻ってきました。「お料理のレクチャーが終わって、みんなでお茶菓子を囲みながら話をする時間があるんですけれど、初めて会った人通しなのになぜか自然と深い話になるんです。ある回で、わたしのお母さんよりも年齢が上の生徒さんがいらしゃって。こんな風にあたたかいごはんを誰かに作ってもらったのは初めてかもしれないとその生徒さんがおっしゃって、そこにいるみんなで泣いてしまったんです。毎日家族のごはんを作り続けている生徒さんの姿や時間が、その一言に詰まっていて、少し胸が苦しくなった。でもいい顔で皆さん帰っていかれて。ただお料理を教えたり習ったりするだけではない、不思議な空間になっているんです」

10月13日にオープンする「mosi」も、クッキングクラスのようにあたたかい気持ちのよい場所になっていくんだろうな。作品を買うだけではなく、お料理を習うだけでもなく。その真ん中にいるナギョンちゃんに会って、話をして。この場の空気の中にいる数分間、数時間で静かに元気をもらって、またそれぞれの場所に帰っていく。

ソウルに来たら立ち寄りたい、旅をする人たちにおすすめをしたい場所がまたひとつ生まれました。

長袖のスウェットに薄いコートを羽織って、今日もレセプションにお邪魔してきます。

秋の入り口、みなさまたのしい週末をお過ごしください。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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