サツマイモとキッチンの相棒。

「友達に誘われて芋掘り行ってきてん。韓国語のレッスンの時におすそわけもっていくな〜」

カメラマンのキヨちゃんからメッセージが入る。大人になってからも芋掘りって楽しいよね。実家が埼玉のわたしは、芋掘りが身近。自分が小さなの時も芋掘りによく行ったし、息子が小さい時にもなんどか川越に芋掘りに行った。祖父と父が営む植木屋さんの庭には、くずになった枝や葉を燃やす焚火スペースが掘ってあって、そこでよくアルミホイルに包んだじゃがいもやさつまいもを焼いてくれた。炭の中から木の枝で探し出した丸いアルミホイルを軍手をはめた手で開くと、ほっかほかのお芋が炭の焼けた匂いと共に顔を出す。焚火で焼いた焼き芋は、風が冷たくなった季節のご馳走だった。

ずっしり重い、特大サイズ!芋掘りで掘るお芋って、記憶の中では小さいお芋がたくさんつらなってるイメージだったけれど。とにかく立派。

キヨちゃんが持ってきてくれたお芋は想像以上に特大サイズ。389g、452g、665g。きれいな紫色のお芋はずっしり重い。1日目は、芋ご飯に。お米二合を砥いで、浸水。150g強のお芋は皮付きで小さくカットして水にさらす。お米の浸水が済んだら、わがキッチンの相棒・無水鍋に水をきったお米を入れて、380mlきれいな水を注ぐ。塩を小さじ1溶かして、最後に水をきったお芋を入れる。カタカタと鍋と蓋が揺れ出して、水がすーっと吹きこぼれたら弱火。10分炊いて、10分蒸らす。手にふきんを持って、無水鍋のフタを一度横にスライドさせる。ぶわっとおいしい蒸気が立ち上る。そのままフタの水気を切って、置く。炊き上がった芋ご飯にしゃもじを入れると、皮の紫と芋の黄色がふわりとくずれる。塩味もちょうどよくきいて、おいしく炊き上がったごはんを茶碗に盛り付け、白ごまを指先ですりつぶしながらかける。お芋が甘い。キヨちゃんごちそうさまとメッセージを送る。

12年選手の無水鍋。ご飯は毎日これで炊きます。そろそろ磨いてあげないと。

2日目。まだまだたくさん楽しめるお芋。今日は何を作ろう。冷蔵庫と食料庫のワゴンをのぞくと、ホットケーキミックスと豆腐があった。前からやってみたかった、もちもちのサツマイモドーナツを作ることに。ふかしたお芋100gに豆腐が150g。小さいサイズが3つ並んだ豆腐、ひとつがちょうど150g。ラッキー!小さい頃から我が家によく置いてあったバニラ風味のホットケーキミックス。スーパーで見かけると懐かしくなって、いつもこのバニラ風味を手にとってしまう。バターは一段目と二段目の間にも挟んで、二段目の上にももちろんバター。メープルシロップは食べる度、その都度かける。どれだけ高カロリーなホットケーキだったんだろう。今思うとちょっと恐ろしいけれど、バスケ部所属の中学生のお腹は、食べてもすぐ腹ペコになるマシーンが体内でフル稼働していたから、カロリーの上にカロリーをのせる毎日だった。

ほんとは絹ごし豆腐の方がよかったのだけれど、冷蔵庫にあるもんで。作ってみた結果、次回は絹ごしで作ろうと心に決めました。

ホットケーキミックスは豆腐とおんなじ150g。一袋が200gだから、残った50gはまたホットケーキに。ドーナツに必要なお芋は100gだけ。ちょっとだけふかすのもなんだかもったいないので、389gのお芋を1本ふかしてしまおう。裏ごしするのが面倒なので、少し厚めにピーラーで芋の皮をむく。滑らかな芋の肌が見えてきたらドーナツ用に小さくカットした100gと、別のお菓子をつくるように、大きめにきったお芋を無水鍋に入れる。水を100mlほど入れて火にかける。カタカタいってきたら中火。5分を少し過ぎる頃、鍋からいい匂いがしてきたので、一度フタを開ける。皮の近くは黄色く色づいて、芯の部分がまだほんのりと白い。お水を少し足して、もう一度火にかける。10分ほどでほっくほくのお芋がふかしあがる。

ほくほくとろっと。おじいちゃんの家の庭の焚火で作る焼き芋も、こんな風にほっくほくでした。

100gはボールに、残りはタッパーに入れて冷蔵庫へ。ドーナツ用のお芋をつぶす。「マッシュポテトを作る時にも便利です」というPOPに惹かれて中華街で買った、長細い泡立て器。芋をつぶすために初出動。柄の部分がしっかりしているので、確かにマッシュするのに便利。楽にどんどんお芋がつぶせる。

キッチンの相棒として、これから大活躍してくれそうです。

芋がつぶれたら、豆腐を入れて泡立て器でじゃんじゃんつぶす。やっぱり絹ごしの方が細かくきれいにつぶれたかも。今日は冷蔵庫にあるもんでドーナツなので、まぁご愛敬。とはいえ、なるべく細かくなるように、さらにつぶしていく。

小麦粉を入れて全体が混ざり合うまで、ゴムベラで練り込む。粉っけがなくなったらひとまとめにして、バットと油を用意。タネはそのまま丸めると、ねっとり手にくっついて離れない。太白ごま油を手に少しぬって丸めると、きれいにつるんと離れてくれる。

計13個、揚げていきます。木綿豆腐のつぶつぶ、やっぱり少し残ってる。

野田琺瑯のミルクパンでドーナツを揚げる。丸いコロッケをあげる時、ドーナツをあげる時。フライパンで揚げるよりきれいに揚がるので、ミルクパンは欠かせない。これもずっとキッチンの相棒として、我が家の食卓を支えてくれている道具。10年選手。そういえば、このミルクパン。SAKRA.JPのリーダーぐっさんと、ほぼ日の西田くんに頂いたものだった。リーダー、今も大事に使わせていただいています。

ドーナツがぷっくら、上に浮いてきました。

コロコロとドーナツが揚がる頃。子供が学校から帰ってきました。おかえり、ちょうどいいところに。もうすぐドーナツが揚がるよ。

お芋の甘さとバニラの香り。モッチモチのドーナツ出来上がり。豆腐が絹ごしだったら、もっと滑らかだったのにな。次はサツマイモも、もう少し多めでもいいかも。お芋のあるうちに、レシピ改善。

アツアツはそのままでも十分においしいけれど、子供にはグラニュー糖をかけてさぁどうぞ。熱いよー、気をつけて。

「うん、おいひい。」13歳のお腹に、ドーナツ4個。ぺろりと収まりました。

この土日もいいお天気になりそうですね。残りのお芋で何作ろう。みなさま、楽しい週末をお過ごしくださいませ。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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