甘くない。
一年に一度、スイスでしか会うことのできなかったユン・セリ、リ・ジョンヒョクカップルが、現実で夫婦になるというニュースが飛び込んできた今週。甘い話題に気持ちはホクホクしながらも、甘くない現実を過ごしている小池です。
約ひと月ぶりの雪に少しだけ心躍る。でも雨なのか雪なのかはっきりしないお天気。そんな日もパン修行を続けておりました。
先週のバケットからスタートし、勝率は半々。バケット→50点、チョコバケット→80点、ベーコンエピ →60点、ベーグル →80点。
生地の発酵具合、滑らかさ、捏ねる時間、焼き時間と温度。間違いのない感覚を身体に刻むのであれば、同じパンを繰り返し焼く方が効率がいいに決まっているのですが。ドライイースト 、塩、水は基本として。強力粉なのか準強力粉なのか。砂糖が入るのか入らないのか。生地を捏ねるのか捏ねないのか。ベーグルに関しては茹でるという工程も入る。少しずつ材料が違い、少しずつ調理工程の違うパンを焼いてみることで、前回はうまくいったのに、今回はどこがうまくいかなかったのか。何が違うとうまくいくのか。種類の違うパンを焼いてみることで、ふとリカバーするための工夫を思いついたりもしています。
そもそもイーストとはなんぞや。イーストが活発に活動できる温度は?
イーストには3種類ある。「生イースト」「ドライイースト 」「インスタントドライイースト 」。私が使っているのはsafのインスタントドライイースト 。コックさんが目印のパッケージがかわいくて、府中の市場でジャケ買い。「ドライイースト 」は生のイーストを熱処理して加工したもの。「インスタントドライイースト 」は乾燥させたイーストを顆粒の状態にして、予備発酵なしでもそのまま使えるもの。だから、生地を混ぜる時にそのまま投入してOKだったんですね。
で、イーストとはなんぞやに戻る。パン作りなどに使用する酵母のこと。イーストの役割は?粉や糖分を栄養にして、生地を膨らませること。香りや風味を生み出す役割をになってくれているのがイーストという存在。
37℃〜38℃が、イーストたちの最も活発に動き回れる温度帯。50℃以上になると死んでしまう。発酵しない、悲しい結果に。
イーストが活発に、いい具合に活動してくれるための温度は、一次発酵と二次発酵で微妙に違う。パンにおいて最も大事な発酵。一筋縄ではいかない。
一次発酵に最適な温度は30〜35℃。雪の予報の東京。そんな日に食パンを焼いてみようとしたのが無謀だったかも。でも発酵時間が長いほど、生地がおいしく熟成していい香りを生み出したり、そのパン独自の風味が生まれるものもある。低い温度で長時間発酵させるパンもある。イーストの量と温度で決まる発酵時間。見極めるには、まだまだ経験が足りない修行の身。
新しいパンを作る度に、失敗する度に調べることも増えていく。一次発酵に戻る。今回の食パン。一次発酵完了の合図は、生地の真ん中を押してみて指がずぼっと入って穴が戻らないこと。むむむ。指に生地がくっついて離れない。
生地の真ん中に指をさしてぽこんと抜けるのがベストな状態。押し戻される状態では発酵不足。逆に空気が抜けて萎んでしまうと過発酵。あまりに長く待ちすぎて、生地をダメにするのだけは避けたい。万が一発酵しすぎてしまったら。その時は生地を薄く伸ばしてトマトソースを塗る。好きな具をのせて焼く。そう、ピザの生地にすると美味しく食べられるのだそうです。リカバー方法もゲットはしたけれど、どうぞ食パンで食べられますように。
予定よりもだいぶ待ちました。その間、なんどか生地の真ん中にそっと指をさしてみる。3度目。明らかに温度が違う。生地が温かい。まだ少し生地が離れないけれど、膨らみは十分な気がする。過発酵は避けたいし、今回はこのタイミングで丸めてみよう。
ベンチタイム。小さめのパンなら10分〜15分。大きめのパンで20分。丸めたあとの締まった状態の生地。ベンチで休憩。リラ〜ックス。その名の通り、ベンチタイムを取ることで生地をゆるめる枠割。ベンチタイムの後、パンを成形する際に、形を整えやすくするためのお休み。
生地が柔らかくなるのはグルテンが切れるから。休憩時間のベンチタイムは生地を発酵させる目的ではないらしい。ゆえに温度管理は必要なし。常温で乾かないように置いておけばよし。ほおっておけばいいベンチタイムにも一つ注意点。お休みが長すぎると人の心もだれるけれど、パンの生地もぶよんとやる気をなくします。生地がゆるみすぎて成形しずらくなるのでこちらも注意。休憩時間は、長くても30分まで。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン。チャイムがなりました。休み時間終了。ぷすっとガスを抜いて丸め直し、油をぬった型につめていきます。
パンを成形した後に行う二次発酵。酵母の動きを最大に活発に。ガスをたくさん発生させて、焼き上がる過程の膨らみを最大にするのが二次発酵の目的。こちら最適な温度は35℃〜40℃。発酵完了の合図は、生地の大きさが約2倍になること。
山がみっつ。ぷっくりと型の上に顔を出すまで、30分ほど。待っている間にパソコン仕事。でも気になって時々布巾の中を覗く。外は雪の割合が増えていく。足元から冷える寒さ。ちゃんと膨らんでくれるかな。
あと10分、あと5分。ノートに書き出した「+5分」の回数が増えていく。二次発酵で待った時間。計100分。この寒い日に、食パンはやっぱり無謀だったかなぁ。オーブンを温め直している間、お腹がすいて餅を焼く。オーブンとトースターとテレビと冷蔵庫。キッチン全体の電気がヒュンと落ちる。となりの部屋の電気はついたまま、しばし気づかず。慌ててブレーカーをあげて冷蔵庫はセーフ。オーブンも温め直す。冬のパン作り、甘くない。
予定よりも長い時間、食パンにつきあいすぎて集中力が切れる。そしてそろそろ夕飯の時間。準備もしないといけない。しばしオーブンから目を離したすきに、やっぱりこういうことが起きるよね。
気を取り直して、食パンは取り出す時に型を「クァン」って叩きつけるんですよ。『여름방학(夏休み)』という韓国tvNのヒーリングバラエティでチェ・ウシクがパン屋さんに食パンを習いに行った時。焼き上がったら、「꽝(クァン)」て叩いて型から外してくださいって先生に言われていた。
あれ、待てよ。꽝(クァン)って音の表現でもあるけれど、これってはずれって意味じゃなかったっけ?わたしの食パン。もしや、はずれってことはないよね…。(『その年、わたしたちは』でチェ・ウシクの魅力にハマった皆様。여름방학(夏休み)YouTubeでハイライトご覧いただけます。とってもオススメです)
するっと型からはずれるはずのマイ食パン。なんども꽝(クァン)とまな板に型を叩いても、さっぱり型から出てこない。油もちゃんと塗ったのに。バターナイフでサイドを型からはずしてもう一度、꽝(クァン)。いっこうに出てこない。꽝(クァン)。やっぱり出てきません。
パンが少しぐにゃりとするけれど、底にもナイフを入れなければ、このままパンは型におさまったまま。ネットリ生地が指から離れないパンダの状態はまだかわいかったけれど、焼き上がったパンは離れてくれないと困る。離れないと全然かわいくない。もう一度、強めに꽝(クァン)!
元々低めの山が、左から右へとだんだん下がっていきます。マイファースト食パンはネパールのヒマラヤの美しい山々のようには、焼き上がらなかった。サンスクリット語でhimaは雪、alayaはすみかという意味なのだそう。外は雪。マイ食パンは雪のすみかにはならなかった。
꽝(クァン)「はずれ」かどうかは、味と生地のきめ細やかさで決まる。祈る様な気持ちで一山、兄弟たちから離してみる。
我が子可愛さもあるけれど、生地はまぁまぁ悪くなさそう。
食パンと格闘した1日。なんだか疲れてしまって、食べるのは次の日の朝にすることに。
トーストしてバターを塗り、生ハムを挟んでパクリ。ちょっとフランスパンの食感に近い、さくっとした生地。決して꽝(クァン)ではない味。だけれど、次回はもっとおいしく焼きたい。
うまくいったパンのあとはまた失敗して、次はおいしくできての繰り返し。バターロールや生クリームと牛乳を入れた食パン。バターを入れたパンにも挑戦したら、2回目のターンに戻ってこよう。
甘くないけどおもしろい。だから続けてしまうパン作りは、どこか語学の学習にも似ています。うまく喋れるようになったと思ったら、その感覚を忘れて。また勉強して。またチャレンジしての繰り返し。どっちも面白いから続けてしまう。この先も、たぶんずーっと。
最後に美味しく焼けたベーグルを眺めながらやる気を取り戻しつつ。
本日もながながとお付き合いいただき、ありがとうございました。冬季五輪にも力をもらう日々ですね。みなさま、たのしい週末をお過ごしくださいませ。