차돌박이(チャドルバギ)。
昨日から、旅の相棒衛藤キヨコと一緒に、韓国全羅南道の木浦へ向かう旅に来ています。
久しぶりに羽田空港第三ターミナルから金浦空港のフライト。アクセスがらくちんで助かるコース。12時05分発のアシアナ航空は満席。東京も久しぶりに快晴の金曜日でしたが、ソウルに着くと雲ひとつない空。温度計の表示は27度。暑い!
思えば金浦空港に降り立つのは3年以上ぶり。飛行機を降りてすぐ、入国審査までの通路がガラス張りになって綺麗に改装されている。でも金浦空港の匂いというのがあって、変わっていないことにほっとする。
木浦までは龍山駅から17時09分発のKTXで移動。龍山の近く、三角地駅にある以前から気になっていた焼き魚の定食のお店に、間に合えば行こうと話をしていました。ランチタイムから夜の営業の合間、16時〜18時までお店は休憩時間に入る。飛行機が金浦に到着したのは14時15分。入国審査やスーツケースのピックアップ、換金などで空港鉄道に乗車できたのは15時20分で、金浦空港から三角地駅までは一回の乗り換えを挟んで27分。休憩時間前に滑り込みというのも、厳しい時間になってしまった。
三角地から龍山まではそんなに遠くないし、とりあえず外観だけでも見に行こうかと三角地駅で下車。13番の出口を出ると、夏の日差しが道を白く照らしている。大通りから一本入った場所にあるお店までは3分ほど。注文が入ると店の前の炭火の上で、お店のお母さんが魚を焼いてくれるスタイル。写真だけはなんども見ていたテウォン食堂。角を曲がるとそれらしい炭火焼のお店が並んでいる。ランチ終了ぎりぎりの時間だったこともあって、店の看板をよく見ずにこんな外観だったと一軒の店に飛び込んだ。店内のメニューを見ると생성구이(センソンクイ)=焼き魚の文字が見当たらない。メニューの看板に書かれているのは「차돌박이(チャドルバギ)」。キヨちゃんごめん。これは完全に違うお店に入ってしまった。でもせっかくだから食べて行く?優しいキヨコ。横に座っていたお母さんと高校生くらいの娘さんが頼んでいた차돌박이(チャドルバギ)。冷凍の状態で薄くカットされた牛肉が、ステンレスのお皿にくるくるした状態で山盛り乗っている。
何度も韓国を訪れていても、食べたことのないものはもちろんまだまだたくさんある。チャドルバギもそんな中のひとつでした。차돌(チャドル)は漢字で石英、박이(バギ)は박다(パクタ)=差し込むという意味の動詞の名詞形。牛の第1~7肋骨あたりの部位のことで、日本だと「ともばら肉」と呼ばれるそうです。脂が多く、薄くスライスした状態で運ばれてくるのが一般的な提供の仕方。
わたしたちがハプニング的に入ったお店では、醤油と酢に山盛りの青ネギとチョンヤンコチュ(青唐辛子)をまぜたヤンニョムがつけあわせとして出てきて、これがめちゃくちゃ旨かった。おいしいという上品な言葉では足りないおいしさ。
テーブルの真ん中に入った炭火の上で、凍った状態の薄いお肉を焼いていく。脂身に先に火が通るから、肉の花がフリルのように咲いていく。薄いお肉で山盛りのネギと青唐辛子を包んでそのまま口に運ぶ。甘い。お肉が甘い。青唐辛子は辛すぎず、口の中の甘みをしゅっと引き締めてくれる。あっという間に2人分のお肉がお皿から蒸発しました。
「テンジャンチゲとご飯はどうする?」
お店のお母さんの顔をふたりでじっと見て、心は決まった。一人前ずつお願いします。
役目を終えた焼き網が運ばれていくかわりに、使い込まれたアルミの小鍋が炭火の上に直に置かれました。
「これ、もともとはきれいな丸だったんだろうね。この形になるまでに、どのくらいかかったんだろう。」
チャドルバギの肉の切れ端がたっぷり入った豆腐のチゲ。日本で味噌汁を飲む時に、香ばしいという表現を使うことはなかなかないと思うのですが、韓国のテンジャン(みそ)チゲには香ばしいという言葉がよく似合う。しっかり固めの木綿豆腐もたっぷり、1人前を半分こしたご飯の器に注ぐ。
「あたし、やっぱり韓国料理の中でクッパが一番好きなんやわ」
そう言って、キヨコがスッカラに乗ったスープとご飯を忙しく口に運んでいる。韓国はやっぱりスープの国だよね。
ハプニング的に入店したチャドルバギのお店はこの先、我らの行きつけのお店になりそうです。
龍山駅に向かう途中、行きたかった焼き魚の定食のお店テウォン食堂がありました。店の前にはお母さんが魚を焼く定位置に置かれたワインレッドのオフィスチェア。夏の強い日差しからリクライニングの椅子を守るように、傘が影を作っていました。
みなさま、今週もおつかれさまでした。どうぞ、よい週末をお過ごしください。