タコス、そうざい、ビールと雑貨。それから編集。

東急大井町線の荏原町駅、東急池上線の荏原中延駅、都営浅草線の中延駅。
3つの最寄駅がある店まで、今日はどの駅から行こうかな。事務所のある代々木上原からアクセスがしやすいのは五反田乗り換えの池上線か都営浅草線。新しく開店した友人の編集者阿部太一さんのタコスのお店に行く予定。一緒にいきましょうと話をしていた人たちとの予定を合わせたら、たまたま水曜日のランチと木曜日のディナーと2日間続いたので、1日目は池上線、2日目は浅草線に乗って「みよし屋」までお邪魔してきました。

そう思われた方もちらほらいらっしゃるのではないかと思うのですが。今年の5月10日にオープンしたみよし屋は元々3代続いたお蕎麦屋さん。店主の太一さんのご実家でもあります。「僕で4代目なんです」お客さんとの会話の中でさらっと太一さんの口から出た言葉。

タコス屋さんなのに、みよし屋?みよし屋なのに、タコス屋さん?

太一さんとの出会いは私の前職ほぼ日時代、2013年まで遡ります。当時マガジンハウス「BRUTUS」の編集者だった太一さん。「あんこ好き」という特集で、糸井さんに毎日あんこのお菓子を届けてくれたのが太一さんでした。毎日ひとつあんこのお菓子をいただいて、コメントをする。あんこ好きな糸井さんは、ふくふく笑顔でコメントをされていた思い出。

and recipeを始めてからも、事務所で一緒にごはんを食べたり、お酒を飲んだり。2021年Hanakoの8月号「料理が好きになるとっておきレッスン」という特集号では、当時Hanakoの副編集長だった太一さんから声をかけていただいて、ハナコの料理学校が開講したという想定でand recipeが学校長に任命していただいたこともありました。必要な道具、野菜の切り方、揃えておきたい調味料など。料理をこれから始める人たちのハードルをぐっと下げて、料理が楽しくなるようにしたいと、丁寧にミーティングをしてできた特集号。楽しく、ありがたいお仕事でした。

そんな太一さんから大好きなマガジンハウスを卒業して、実家のお蕎麦屋さんだった場所で新しいことをはじめようと思いますという話を聞いたのが2021年の3月。飲食店を多数作ってきたand recipeの山田がレシピや店舗の開店業務をお手伝いすることになりました。

NETFLIXで公開されていた「タコスのすべて」。メキシコのソウルフードであるタコス。とうもろこしの粉でつくるトルティーヤの上には、何をのせてもいい。「タコスって自由なんです。うん、タコスは自由だ!」タコス目線の語りが印象的なこの番組の面白さについて、熱く話していた太一さんの顔、今でも時々思い出します。

その直前の年末にご両親をなくされていたことは、2021年の3月に会う少し前にメールを頂いて認識していました。子供の頃、生活をする場所でもあった、実家の稼業であるおそば屋さんのみよし屋。太一さんには中学生と小学生のお子さんがいて、奥様も太一さんも働いている。ご両親がご健在の間は、子どもたちが「ただいま」と立ち寄る場所でもあった場所。この先、子どもたちが学校から帰ってきて、誰もいない家に戻るよりも、店でお客さんと接しながらも「おかえり」と迎えてあげたい。

太一さんが子供の頃。年末、年越しの忙しい日にはお父さんとお母さんを手伝うこともあったけれど、ご両親と同じようにお蕎麦屋さんをやることは難しい。それなら、場所は同じだけれど、新しい食べ物を提供して、お父さんとお母さんと同じようにお客さんをお迎えすることはできるのではないか。

自分がずっとやってきた仕事、そして一番得意なことといえば編集。店のバックスペースには編集事務所を作って、飲食店と編集の仕事を一緒にやる。

そこで太一さんが生業として新しく選んだ食べ物が、自由に編集ができるタコスだったこと。少し外からお店の開店までを見ていた自分からすると、その縁にはたまらないものを感じます。そば粉と、とうもろこし粉。たぬき、きつね、えび天、かき玉、刻みネギ、カレー。ベースのそばは一緒で、実は具材が自由なそば。豚肉をスパイスに漬け込んでじっくり焼き、細かく割いたカルニータス。フライドフィッシュに、野菜の煮込み。何をのせてもOKなタコス。そしてどちらも、それぞれの国のソウルフード。

お父さんとお母さんが営業されていた「みよし屋」の看板はそのままに。内装だけポップに生まれ変わったみよし屋さんには、そば屋の時代にお客さんだった地元のお母さんたちもタコスを食べにいらっしゃっていました。

太一さんがお店ができるまでを綴った「小さな店のはじめ方」。POPEYEの連載を読んでやってきた若者たちと、地元のお母さんたちがひとつの空間に混ざっているランチタイムのみよし屋は、そばのように、タコスのように、自由で気持ちの良い場所になっている。

定休日は火曜日。毎日11時から21時までの通し営業。週末は、太一さんのことが大好きな友人知人が中延に集まって大賑わい。

ロゴやメニュー、デザインが必要!というところはどんとこいで、太一さんと並走してきたデザインユニットのBOB FOUNDATIONのひろみさんとミツさんが、店頭に立っていたりもします。運がいいと購入することができるミツさん手作りのシナモンロールもぜひ味わっていただきたい。

タコスを食べたあとに、ヒロミさんと編集スペースで打ち合わせをしていたら、思いもよらなかったデザートにありつきました。「クレープ食べます?ヌテラバナナ、シュガーバター、レモンシュガーバター何がいい?」。迷いに迷って、ヌテラバナナを選択。生地もしっとりなめらか。あっという間にお腹に収まりました。

「WRAP ME TENDER」が合言葉のみよし屋のデザートに、この先クレープが登場したりすることもあるかもしれない。クレープも「わたしを包んで。」だもんね。

「もしかしたら、そんな日が来るかも?そこも太一の編集なんですよね。」

みよし屋という箱は、太一編集長のもと、自由で変化し続けるわくわくに溢れていました。水曜と木曜にご一緒したメンバーは口々に、「タコス、全種類食べたい。思ったよりもぺろっといけちゃう。2巡目いきますか」と想像を超える食べっぷり。誰かが誰かを紹介して、隣にいる人と自然に会話をして、気持ちのいい5月の風がその間を通り抜ける。いい時間でした。

お近くにおいでの際には、お近くでなくても。タコスを食べに、太一さんに会いに。「みよし屋」ぜひおいでください。

今日は天気が良さそう!タコスとビールにぴったんこな陽気ですね。

今週も1週間おつかれさまでした。みなさま、どうぞ良い週末をお過ごしくださいませ。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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おしらせ

ゴビ砂漠を走るレース「GOBI MARCH」で、隔週水曜担当の若岡くんが優勝しました。世界チャンピオンおめでとう!苦しくも楽しそうな様子がページから見れます。