気持ちのいい季節。

成田第二ターミナル。搭乗口の83番は少し距離が離れているので、余裕をもってにゲートに向かってくださいてとチェックイン時に聞いていたので、早めに移動をしてコーヒーを飲みながらスマホを見る。

「小池さん。今から韓国」。


台湾、你好我好の青木由香ちゃんからLINEが入る。「わぁ!わたし今、成田だよ。」なんで私がこれから韓国に行くことが分かったんだろう。由香ちゃん、どっかで見てる??

「って、韓国行くの?私は今、桃園」

やっと通じ合いました。小池は商品作りのためにソウルに向かうところだったのですが、なんと同じタイミングで由香ちゃんもソウルに向かっているらしい。「何時到着?」「14時40分」「もしかしたら空港でちょこっと会えるかもね!」熊本のお友達とソウルで待ち合わせて旅をする予定だという由香ちゃんと、どこかでタイミングが合えば、ちらっと会おうというやりとりをしてLINEを閉じる。世界のいろんな場所から集合して、一緒に過ごす旅が戻ってきた。

今回の移動は、はじめて搭乗するエアプレミアという飛行機。LCCなのだけれど、たまたま乗った機体が長距離路線用だったこともあって、席と席の間が幅がゆったりしている。「간식입니다.(カンシギンミダ)」たっぷりサイズのマドレーヌと飲み物はコーヒーか水が選べて、ちょっと小腹を満たすことができる。成田空港に早めについて、吉野家でがっつり牛カレーを食べてしまったのでおやつは鞄にしまって飲み物だけをいただく。家を出た時にはうっすら陽が差していたのに、窓には雨粒がシュッシュと走っていた。

仁川空港に到着。飛行機を出るともわっと熱気がやってきた。ガラスを通して入ってくる光はすっかり夏の日差し。「今、荷物を持って外に出たところ」とタッチの差で少し前に台北からソウルに到着した由香ちゃんからLINEが入る。お友達との待ち合わせもあるだろうから、気にせずホテルに向かってね。何かあったらいつでも連絡ください。返事を送って、入国審査の列に並ぶ。「5月、いいね。」一つ前に並んでいた20代くらいの女の子たちが話している。確かに。猛烈に熱くなる前の、この季節のソウルは最高だ。来たいと思った時にいつでも旅に出られた時には、こんな風にありがたいって思っていなかった。5月のソウルがいいということ、心と身体で感じることができるのも3年ぶりなのだった。

タイミングよくA’REXの出発時間に間に合ったので、指定席でゆったり座ってソウル駅まで向かう。今回のホテルは東大門総合市場まで歩いていけるところを取った。土日は閉まってしまう反物屋さんもあるから、金曜日に少しでもお店をまわろうとホテルで待っていてくれた友人ダソムと合流。荷物を置いて、急いで市場に向かう。

17時をすぎると店じまいを始める店舗がほとんどなのだけれど、お目当てのサンファ商会はまだ布を見せてもらえる時間だった。綿とリネンの布のサンプルを渡してくれて「明日朝電話をくれたら、昼過ぎまでにカットしておくね。そういえば、さっき日本の有名なメイクアップアーティストの人が布を選んでバックの注文をしてくれたの。この人知ってる?」とインスタの写真を見せてくれるお母さん。知ってます、知ってます。少し前、テレビでメイクをする企画にも出ていた方です。それまでずっと韓国語で話をしていたおかあさんが、「有名な人」と日本語で言ってくれた時には思わず笑ってしまった。

ぎりぎり開いていたお店でグレーとブルーのファスナーを買って、今日の買い物は終了。

東大門総合市場の向かいを走る清渓川に夕暮れの光があたって美しい。
「예쁘다(イエップダ)」(きれいだ)
「昨日は分厚い雲がかかっていたんだけれど、今日は気持ちがいいね。」

昨日の名残の雲がところどころにブルーグレーに染まっていて、いつまでも眺めていたくなる空だった。

「今日は、はなえさんとワインを飲まなきゃと思って。連れていきたいお店の候補が二つある。三清洞とホテルの近所、どっちがいい?」
「そういえばソウルに旅に来ることができるようになってから、三清洞は全然ゆっくり歩いてなかった!三清洞でもいい?」

ウルチロ4街から5号線に乗って光化門まで行って、マウルバスで三清洞まで移動。途中、デュータの前で、ファーマーズマーケットが開催されていておいしそうな桃に目がいく。

「この桃、買ってかえれるの?」
私たちの少し前を歩いていたアジュモニが店主の男性に聞いている。同じことを思っていました。お母さん、訊いてくださってありがとう!


「이게 가짜예요.(イゲ カッチャエヨ)」これは偽物です。


そうですよね。まだ桃の季節には早いよね。小ぶりで、ちょっと硬めの桃ってシャクシャクした食感もおいしいじゃないですか。二つ買ってお散歩しながら桃をかじるのも悪くないなと想像していた小さな計画は、あっという間に終了したのだけれど、ダソムのお土産に桃のジュースを購入。

「혹시 일본분이세요?(ホクシ イルボンプニセヨ?)」もしかして、日本の方ですか?
「네 일본 사람입니다.(ネ イルボンサラミンミダ)」はい、日本人です。
「わたし、桃の栽培を日本で習ったんです。」
「え?そうだったんですか?日本のどちらにいらっしゃったんですか?」
「大学生の時に山梨で桃の作り方を習って、長城というところで桃を作っているんです。」

とっても綺麗な日本語で話をしてくれた。

「행복을팜(ヘンボクウルパム)」幸せという名前のピーチファーム。
長城にはおいしい食べ物がたくさんあるらしい。いつか行ってみたい場所がまたひとつできました。

気持ちのいい日の締めくくりに訪れたのは三清洞のワインバー「FALBALS」。アーティストのダソムはこの界隈の美術館や博物館にも詳しい。今年どこかでダソムにガイドをお願いして、美術館廻りも実現したい。

「日が暮れていく時間に、ここのテラスでワインを飲むのが最高なの」

ひとつだけ空いていたテラス席からは、景福宮の城壁が見える。城壁の前には5月で瑞瑞しい緑のイチョウの木。「秋にここに来るのも良さそうだね。」

少し汗ばむくらいの陽気にはよく冷えた白ワイン。メニューを見ながら、なんのワインを注文するか二人でうんうん悩んでいるとすくっとダソムが立ち上げる。

「私、ワインのジャケットチェックしてくるね」

じっくり吟味された白ワインの味は、フルーティーだけれどドライでするする喉に染み込んでいく今の気分にぴったりのワインだった。

「さすがダソム。最高のセレクトだったよ。これどこのワインなのかな。私、ポルトガルのワインが大好きなんだよね。」
「イタリアのワインかなって思って選んだんだけれど、ちょっと待ってね。あ!ポルトガルのワインだ!」

パチン!思わずハイファイブ(ハイタッチ)。

19時でもまだ明るかったソウルの空がすっかり群青色に変わって、ワインのボトルが空になったのは閉店時間の22時でした。

今週も1週間おつかれさまでした。みなさま、よい週末をお過ごしください。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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