おいしくないわけがないけれど試したことのなかった味。

今週、体がちょっと疲労ぎみでした。何かを口に入れようとする。と、割と敏感に「あ、これは今あんまり食べたくない。こっちはOK。でもちょっとでいい。今日はコーヒーあんまり受け付けない」。舌とか喉とか食道が、逐一反応する。香りにも反応。今日はルイボスティのほうがいい、ジャスミンティはNG。終始、そんな感じでした。

たべものを美味しく感じられて、もりもり食べられるって体が元気な証拠なんだなぁ。年間を通してみたら、美味しくたくさん食べる日の方が間違いなく長いので、疲れていて味に敏感なこういうタイミングで食べたいものは何か。それを知ることは、わりと貴重な機会なのかもしれません。体の声をしっかり聴きながら食べる時、とでもいいましょうか。

先週の土曜日はまだ、ごはんもりもりモードでした。ミュージシャンでライター、時々お菓子屋さんの岡田カーヤさんに「ポルトガル菓子って、ワインにも合うんだよ」とメッセージをもらい、神保町のドース イスピーガさんに試しにいく。ワインとポルトガルのお菓子。おいしいかもしれないけれど、知らなかった組み合わせ。

金曜日の夕方。朝から立ちっぱなしの撮影が終了。こんな日に体が一番欲するものはなんぞや。スタジオを出てからそれだけを考えていました。撮影で使ったハーブをたくさん頂いたので、ぶたとルッコラの鍋をポン酢でさらっと。いくらでも食べられるやつだけれど、今日は違う。カレー粉と片栗粉をまぶして衣にしたカレイの唐揚げ。カレーとカレイがかかってるけど何か?今日食べたいのは、そういうやつじゃない。玉ねぎの代わりにセロリをよく炒めてニンニク多めのトマトソースパスタ。いい線いってるけど、それも違う。きび砂糖と醤油を大さじ1ずつお皿でまぜる。2分でゆであがるうどんを熱々のまま、さっきのお皿にのっけて卵の黄身を落とす。鰹節をぶっかけてよく混ぜて食べる釜玉うどん。簡単でいいけど、今日はその気分でもない。じゃぁ、いったい何が食べたいんだ。体くん。

ポルトガル留学歴のあるカーヤさん。カーヤさんの解説を聞きながら飲むポルトガルワインはたのしい。ワインに合わせてくれたお菓子はニンジンのケーキ。甘くないどしっとしたケーキが、ポルトガルのグリーンワインにぴったりでびっくり。
口に含むと不思議とお菓子の味がするワイン。お菓子に合うワインなのか、お菓子みたいな味のワインなのか。

ぐるぐる考え続けて出てきたのはチーズケーキ。ベイクドでもなく、ふわふわの蒸しパンスタイルでもなく、レアチーズケーキがいい。酸味強めやつ。いますぐ食べたい。もちろん作って冷やす時間を待つ元気はないから、既製品を購入という一択のみ。日が落ちてから一段と寒い。家までのルートを外れないお店でなんとか購入したい。ちょっと左折すればスーパーにも寄れるけれど、それすら億劫になる寒さ。北風に完敗。こういう時はコンビニ。オヤツコーナーを探す前に、乳製品コーナーで「レアチーズ」という文字とばっちり目が合いました。

「チーズ専門ブランド『ロルフ』のレアチーズケーキ」プレーン。

バイキングのロゴがかわいく、おいしそうな佇まいでこちらを見ている。ニュージーランド産のクリームチーズを28%使用。原材料もチェック。砂糖、ショートニングなど、酸味にあたるものはチーズのみっぽい。甘めだったら少し酸味を足せばいい。ストロベリーバージョンもあるけれど、今日はプレーンにしよう。

またしばらく外でお酒を飲むのはお預け。

今日の体が欲する味であることを祈って、チーズケーキを2個購入。足早に自宅に戻ります。撮影でたくさんいただいたハーブの中にスペアミントもあった。パンとたたくと、顔全体にミントのパンチが入って一気に目が覚める。プッチンではないけれど、容器にスプーンをいれてパカンと裏返しの儀。微妙に失敗。早く食べたかったから仕方ない。

バイキングのロゴがかわいいパッケージ。

早速ひとくち。甘さは控えめの優しい味。体が絶好調な時だったら、このまま半分食べて、途中でメープルシロップをたらして味変するところ。今日は、どうも「すっぱい」を欲している体。冷蔵庫にある酸味はレモンともうひとつ。子供のデザートの残りの半分。伊予柑という選択肢もありました。体が絶好調じゃない時でも、味は初めての方をチョイスする性格です。桐島、部活やめるってよ。伊予柑、絞ってみるってよ。

あわないわけは、ないじゃないですか。柑橘とレアチーズケーキ。でも、レモンじゃなかった。今日の体に、伊予柑は大正解。ミント+伊予柑の爽やかな香りと酸味と甘味が100点。ペロリと平らげて、パワーがチャージされました。伊予柑のこんな活躍の仕方、想定外。

12月下旬から2月下旬まで食べられる伊予柑は、明治19年に山口県の阿武郡東分村、現在の萩市で発見された偶発的に生まれた品種なのだそうです。(みかん×オレンジという説もあり)果汁がたっぷりで手でもむきやすく、酸味のさわやかな伊予柑。母の実家が愛媛なので、箱でたくさんのみかんが届く冬。温州みかんの箱の中に、いくつか違う品種を紛れ込ませて送ってくれる親戚の魔法のみかんボックス。思えば伊予柑は、入っていると嬉しいご褒美みかんでした。ここ数年は寛平や紅まどんなのインパクトに、伊予柑があることの嬉しさをしばし忘れておりました。

みなさま、体調はいかがでしょうか。相変わらず落ち着かない日々が続きますが、どうかごはんのおいしい週末でありますように。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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