オープンキャンパス。

来年受験生になるこどもと一緒に、オープンキャンパスなるものを体験してきました。

今では当たり前になっているオープンキャンパス。自分が受験生だった頃には、なかった気がする。行きたいと思っている大学の校舎に足を運んで、学校の空気や匂いを自分の身に纏うと、勉強ももうちょっと頑張れたんじゃないかな。

オープンキャンパスがいつから始まったものなのか、子供が受験生になるまで考えてみたこともなかったのですが、調べてみると、1990年代以前には高校生や保護者を対象にした大学構内の公開は、積極的にはされていなかったようです。1990年後半になると、少子化の影響もあり受験生の確保のために一部の大学でオープンキャンパスが開催されるようになったのだとか。東洋経済オンラインの2017年の記事によると、オープンキャンパスの名称が使われたのは、1988年立命館大学が最初と言われていて、進学相談会については、立教大学が1978年に「進学相談会on Campus」という名称で実施するなど、1980年代に受験生たちにキャンパスを公開する実施校が増えていったようです。ということは、自分が受験生の時にはオープンキャンパスを行っている学校はあるにはあったたけれど、行っていない学校もあった状態。きっと塾にはそういう情報がたくさん溢れていたはずだから、自分がそこに興味を持っていなかったのかもしれない。オープンキャンパスを体験せずに入った大学は、とても楽しかったので結果オーライなのですけれど。

仕事や学園祭で2度訪れたことのある校舎。子どもと一緒に足を踏み入れると、今までとはまったく違うキラキラした雰囲気を感じました。楽器を背負って訪れている高校生もいて、みんな緊張感というよりは、わくわくとそこにいる感じ。なんだかとってもいい空気が流れている。入り口の左手には古いレンガ作りの校舎が残っていて、たくさん葉をつけた大木に正午の光がまっすぐ降りてきて、たくさんの木陰を作っている。

申し込んでいたソルフェージュの体験授業が始まるまで少し時間があったので、校庭に出ていた屋台で削りいちごなるものをひとつ買って、ふたつのスプーンでつっつく。学校の雰囲気があまりによかったことも相まって「これから大学生になるの、うらやましいなぁ」とつぶやくと、「ママもなろうと思えば大学生できるじゃん」と真っ当なひとことが子どもからかえってきました。うん、確かに。海外の大学で、もう一度勉強をしたい夢はずっと心に持っているのだけれど、まさか子どもからそんなひとことが飛び出すとは思わず、ちょっと嬉しくなりました。

体験授業の時間になって、講堂に入ると舞台の上に大きなグランドピアノが一台置いてあります。舞台の上にピアノが置いてあるだけで、なんだかわくわくしてしまうのは、なぜなのでしょうか。少しして、教授が袖からとことこっと歩いていらして「今日はね、皆さんにソルフェージュの授業を体験してもらうのですけれども、この大学に通う学生さんたちにも手伝ってもらいます」と言って授業がスタートしました。

指揮、クラリネット、バイオリン、作曲、ソルフェージュなどを専門的に学んでいる学生さんたちが次々登場して、ピアノを3音ずつ叩いていく。前の人が奏でた音に続いて3音、また3音と鍵盤を叩いていくと、ドミソ、ドミソファラソ、ドミソファラソシソラと単音だった音がどんどん曲になっていく。「あぁ、もう限界かな。先生もこれ以上覚えられないや」というところまで、自由に鍵盤を叩いていく学生さんたちも楽しそうだし、見ているこちらも次にどんな音がやってくるのか前方からやってくる音に真剣に耳を傾けていました。 

心地のいい音楽だなぁとか、体が勝手に踊り出してしまう音楽だなぁとか、とある場面で流れると涙を誘う音楽など。人を癒やしたり、ざわざわさせたり、心を動かす音楽の基礎能力を養うための訓練であるソルフェージュ。楽譜を読む力、音を聴き取る力、リズムを理解する力、音楽の理論を理解する力をじっくり学ぶと、この音楽を聴くとなぜ気分が良くなるのか「なんとなく」だった部分の説明を自分にしてあげられるようになるのはとても楽しそうだ。子どもが使っている楽典の教科書を見ると、とても難しそうに見えていたソルフェージュも、こうやって体験から学ぶと理解ができていくのはもちろんのこと、遠い昔からこうたって音楽があちこちで生まれてきたんだなぁということに感慨深くなる時間でもありました。

体験授業が終わって、そばを食べに行く道すがら「どうだった?」と子どもに聞いてみると「よかった。おもしろかった」と短い言葉がかえってきました。

受験までの一年半弱。どこかでエンジンをかけなければいけないけれど、子どもの行きたい場所、やってみたいことが、体験を通して具体的になっていく様子をそばで見られるのは、親として幸せなことだなと感じた暑い夏の一日でした。

もうすぐお盆休みがやってきますね。みなさま、暑いけれどよい夏をお過ごしください。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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