ムトーの図書館(10冊目)
こんにちわー。ムトーです。
なんか、寒くなったと思えば夏みたいに暖かくなる晩秋。
何ヶ月か前から予定されていた飲み会が先週ふたつあって、それをこなした僕はもう冬眠モードです。
冬眠する前に本を読んでおこう。
今回紹介するのは 椎名誠 『岳物語』。
先月、僕が読書するようになったきっかけの本を友人に紹介したところ、後日「読み始めました」とメールがあって。
その本が椎名誠さんの『哀愁の町に霧が降るのだ』という小説。
高校1年の時に健康診断にひっかかって、大きな病院で再検査を受けることになって。母がそれに付き合ってくれて、たくさんの種類の検査を受けて待ち時間も多くて暇そうにしている僕に渡してくれたのがその本。
ハードカバーというかなんというんだろ、表紙はハードではないけど文庫でも新書でもない、ハードカバーと同じ大きさの本で、上・中・下の3巻の上巻。ほとんど本を読んで来なかった僕がそんな文字だらけの長い小説を読める訳がないと思いながらも、本当に退屈で退屈で、仕方なくため息をつきながら検査室前の緑色のソファで読み始めたのです。
全然想像と違った。難しくない。
そして、小説っぽくない。小説なのか実話なのか全くわからない。
第1章のタイトルは「話はなかなか始まらない」で、まだどんな小説になるのかわかっていないまま筆をとっていることがそのまま書かれている。30ページ以上それが続き、第2章のタイトルが「まだ話は始まらない」。まだ書くことが決まっていない。
その訳のわからない展開というか展開しないところがなんとも面白い。
病院で声をだして笑ってしまった。
当時、母とふたつ上の兄がいつも椎名誠の作品のことを「面白いねえ」と楽しそうに話していたのは知っていたんですけど、「面白い」が こんな「面白い」だとは思わなかった。
もう、夢中で読んで。検査結果を聞く時間までに上巻読了。はやく次が、中巻が読みたい。
中巻を読み始めたのは病院のベッドの上。1週間の検査入院。
検査入院って暇なんですよ。体調悪くないし。読書が捗るはかどる。(この「捗」る という文字、手へんに歩くだと思ってたら違うんですよ!知ってた?)
最初の2日で「哀愁の町に霧が降るのだ」中・下巻を読み終えて。もう、他の作品も読んでみたい。
母が家にある椎名誠作品を何冊か持って来てくれたけれど、それもすぐに読み終えたんです。
エッセイか小説か不明な作品ばかり。でもそんなことはどうでもよくなって、とにかく読み耽ったんです。入院中に。
その中の1冊が今回紹介する『岳物語』。
これは多分小説なんですけど。主人公は椎名さんで、息子の名前が「岳(がく)」。実際の椎名さんの息子さんの名前も同名。湖のほとりで孤独に生活するエッセイストの野田知佑さんが登場するんですけど、その野田さんも実在の人物。
だから実話でしょ、と思いながら読み進めます。
椎名さんは岳くんを伸び伸びとした子に育てようとして、その通りに自由奔放に育ちます。友だちのような親子の関係が描かれます。でも、岳くんはちょっと自由が過ぎて周りから乱暴者と受け取られることも。
そんな岳くんは、小学校5年生のとき、父の元を離れて野田さんのところで長期間暮らし始めます。野田さんは岳くんをひとりの男として接します。ここでの生活で岳くんは大きく成長し、父親の椎名さんとの関係性にも変化が起こってきます。
そっか、エッセイなら岳くんと野田さんの描写はありえないから、これはあくまで小説なのか、と気づいて、一応小説だと僕は思っているのです。
すごくいいんです。登場人物みんな。釣りのシーンとかね、いい。
ぜひ読んでほしいです。『哀愁の〜』もぜひ。
『続 岳物語』という続編があって、その文庫本も持っているんだけど、あんまり覚えていなくて、ちゃんと読んだのかもあやしいので、これから読もう。
本格的な冬眠に入る前に読書もいいなあ。
妄想旅行社ムトーツアーズ 代表 ムトー