南国の北、心の洗われる島にて
沖縄県民が行ったことのない「沖縄」
沖縄県民のほとんどが行ったことのない伊平屋島を走ってきました。
沖縄の有人島の中では、もっとも北に位置する人口1,400人の小さな島です。南国の中の北国のような立ち位置ですが、もちろん南国です。
那覇空港から高速バスに乗り込み3時間前後で、今帰仁村の運天港へ。そこからフェリーで波に揺られること1時間半ほど。
1月後半でも気温は15℃前後。短パン、ノースリーブで走れます。
最北の村まで来た目的はランニングレース「伊平屋ヴィレッジトレイル」への出場。島をぐるりと回って楽しめるトレイルレースです。
距離は30km、獲得標高1,200mと手軽に参加できる設定なのが嬉しいところ。ラン14km、ウォーク6kmの部門もあります。来年の出場を検討される方はお早めにどうぞ。
心がピュアになる自然
島をぐるっと回って分かりました。この島、すごいんです。
南端の野甫大橋から望む海が驚くほどきれい。え、やだ、何これ。曇り空なのにマリンブルー。透明度の高さは、もう戻れない10代の頃のピュアな心のようです。
お次は北端へ。ちなみに交通手段はレンタサイクルでした。フェリーターミナルのすぐそばで借りられます。なぜかママチャリ。そういえば思春期ど真ん中の頃に、ママチャリに乗ってたなあと、ここでも10代の心を思い出しました。
巨大な岸壁が見えてきたら目的地は間近。クマヤ洞窟です。クマヤは「こもる」という意味だそうで、天岩戸伝説が残されています。
中は広々。間取りにすると8LDKくらいです。これなら、アマテラスオオミカミも巣ごもり生活でくつろげそう。知らんけど。無責任な発言をするくらいに、少年の頃の冒険心をくすぐってくれる洞窟でした。
隆起した古い地層を見ることもできます。伊平屋島は沖縄でもっとも昔からある島のひとつです。波状に押し曲げられた地層は地層好きにはたまりません。
滞在したホテルにしえの食事が大満足だったことと、その目の前にある「まえどまりスーパー」のフォントが味わい深かったことも記しておかねばなりません。
夕飯の刺身、タコ、もずくと海の幸が特に美味でした。レース当日の朝食ではイラブチャーの天ぷらを食べられなかったことが悔やまれます。郷土料理の「うずまきもち」は素朴な味わいで好きです。
レースも大満足
観光情報に終始しかけていましたが、走るのが目的でした。
スタート会場のDIY感あふれるゲートがすてきです。後ろに見える虎頭岩はなんだかシンボリックで絵になります。
レース序盤の見所はサンゴや貝の敷き詰められたビーチ。細かい砂のうえを走り慣れていなと苦戦するかもしれません。僕は砂漠で走り慣れていて、それほど苦もなく走れました。
砂浜から舗装路、林道とつないで、ようやく里山に。南国の植生を感じつつ、最高峰の賀陽山や阿波岳の山頂部から島ならではの絶景を堪能します。標高は200m台ですが、海が近くて高度感は抜群。
そして、下ればすぐに集落です。我喜屋では赤瓦の住宅とサンゴの石垣という昔ながらの街並みが残っています。
走りやすいコースで初心者にもおすすめ。走れるが故の悩みもあります。エイドに長居しづらいということです。
地元色の豊かな食べ物がずらり。どれも美味しそうで悩ましい。。。
食べすぎて腹痛に見舞われること必至なので、取捨選択に葛藤します。僕はアイスを食べるためにゴール後にエイドまで戻りました。
黒糖パイにいたっては、まだ商品化されていない貴重なものでした。サクサクした軽い食感に黒糖のコクのある風味がよく合います。
エイドや山のキツいところに、地元の子どもたちが書いてくれたメッセージが飾られていて、なんだか心が和みます。そのおかげでけっこう走れました。と言いつつ最後の腰岳の山頂手前がキツくてサボって歩きました。
海から山、そして集落。島の営みをひとつなぎにしようとするコースだと肌で感じ取れるレースでした。
本番は後夜祭
すでに伊平屋島を満喫してきたものの、まだ本番ではありません。
本番は後夜祭。新鮮な海鮮を味わいつつ、時間が経つにつれ、ドリンクはビールから泡盛に。そして、ジャンケン大会や抽選会、ステージパフォーマンスなどで会場は盛り上がる一方です。
最後は自由に踊るカチャーシーで締めくくり。大太鼓に合わせ、みんなが思い思いに体を動かします。イーヤーサーサー。掛け声はどんどん大きくなり、熱を帯びてくる会場。どこで練習してきたのかというくらいの一体感でした。
熱気に包まれてくると、踊りはどんどん自由に。リズムに合わせ、即興で自在に動きまわります。イーヤーサーサー。全身を使うことで酔いが回り、首を振ると地球も回ります。ハーイーヤ。
最終的には酔いが回りきって、目も回り、会場の照明がやけにきらきらと眩しく感じられました。昼間に見てきた澄み切った海のようです。
海底までがきれいに見える透明度の高さ。僕たちは輝ける海の底に立っているのかもしれないと錯覚しました。実際にはそんなはずもないのですが、景色に心を打たれ、走って、笑って、いつの間にか心が洗われて、透明度が高くなっていたようです。
このまま終了かと思いきや、後夜祭後に関係者打ち上げへとなだれ込みます。ここにきて、前回紹介したknotスタンプを押してきました。
わずか2泊の滞在でしたが、帰りのフェリーが港を発つ時には、また来年と手を振ってしまう、そんな鮮やかすぎな時間を過ごせました。