打ち合わせという名の宴会キャンプ

今回はつくりかけのキャンプ場からお届けです。場所は石川県の白山麓にある一里野温泉スキー場。ゲレンデの一角にキャンプ場をつくるという計画の仲間に加わったことから、まだ工事中の現地でキャンプをしながら、打ち合わせをすることに。

BBQをしつつ、ちょっと塩味が濃いなと感じたら、ビールに焼酎、ワインで口直しです。口も手も慌ただしく動くことしきり。いやはや、打ち合わせというのは大変忙しいものです。

夜が深くなるにつれ、空は青みを失い、鉄瓶のように黒々としています。夜空のグラデーションと同じように、打ち合わせはいつの間にか宴会へと変貌を遂げていました。その内容は詳細に覚えていないものの、朝になったら忘れてしまうような話題で盛り上がったり、熱い思いをぶつけたり。

笑い話の途中で、キャンプ場をこんな風にしていきたいと語ったかと思えば、その直後には、夜の街での疑似恋愛について真面目に討論。ジェットコースターのように落差がありました。

宴の後に残ったのは、キャンプは楽しいという記憶だけ。普段だとキャンプをするというと、走りに行って翌日も走るだとか、山を登って翌日も山に行くために野営することがほとんど。手段としてのキャンプです。車でテントサイトに横付けするのは新鮮な気持ちになりました。「よし、キャンプをしよう!」とキャンプを目的にしていたのは、少年時代まで遡らないと思い出せませんでした。

振り返ると、いつもは夜明け前からごそごそと準備して行動を開始するため、寝るのが早くなります。夜更けまでランタンの明かりを囲むのも珍しいことです。

楽しい会話に、美味しいご飯、涼しくて穏やかな夜。それだけでも満足なのに、周囲に街の明かりがなく、星空は驚くほどの美しさ。あまりにキレイなので、タープから顔を出して、ずっと夜空を眺めてしまいます。

無数の星々が集まっているから、そのまたたきが余計に美しく見えます。一緒に笑い合える人たちと、同じ時間を共有できるのは、とても貴重なことです。

などと書きつつ、普段はひとりでハアハア言いながら走るのが好きです。山でひとり、あるいはごく少人数で淡々と進んでいくのも得意としています。

今回のキャンプとは異なり、山でひとり激しい雨に打たれ、強風に吹かれて低体温になるギリギリでしのぐことも。なんとか乗り切って無事に帰ることができると、それだけで嬉しくなります。生きているだけで儲けもの。自己肯定感はマックスです。なにも成し遂げていないのに達成感、喜びがあります。

やや極端かもしれませんが、みんなでの宴会、ソロ活動、ふたつの方法でどちらも楽しいと感じられるというのはよきことです。

キャンプしながら、昼間に読んだ記事を思い出し、そんなことを考えていました。

書かれていたのは、どうにもならない問題を解決する手段として、暴力を思い浮かべても、自分を引き止めてくれる「誰か」の存在があれば、最後の最後で踏みとどまることができるという旨の記述でした。

みんなに否定されても、最後まで寄り添ってくれる「誰か」。自分を認めてくれる「誰か」がいるだけで、ずいぶん救われます。人はひとりでは生きられません。が、時にはひとりで、生きているだけで儲けものという体験をしておくと、絶望の縁に立ったとしても、さらに踏みとどまれるのではなかろうかと、ぼんやり思う次第です。

楽しい宴会から、あらぬ方向に話が転がってしまいましたが、これでよいのです。自分で自分を肯定すればよいのです。

わかおかの山日記

(隔週水曜日更新)
山を走ったり、歩いたりするのが好きです。よく忘れ物をします。そんな日々を記すライターでランナーです。

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