Mostly earth, sometimes space.

H-IIAで上がった衛星 -最後-

ども、カルロスです。

H-IIシリーズで上がった私が関わった最後の衛星です。もちろん、掠めた衛星はもっとあるんですけど、それを言い出すとキリがないですしね。

H-IIA F7 2006/01/24 ALOS (陸域観測技術衛星「だいち」)

実は、前回話したADEOS-IIが運用を停止する数ヶ月前にこの衛星ALOSに担当が変わりました。そのため、”お前が何か仕掛けたんじゃないか?” と冗談で言われました。

この衛星も私にとって、教科書のような、先生のような衛星です。この衛星にはPALSARという合成開口レーダー。そして光学カメラは、三つの角度で取り付けられたPRISMと、カラー画像で観測するAVNIR-2の二つ。合計三つの大きなセンサーが取り付けられていました。

データの確からしさ

ほぼ球でも何度も書いている、そのデータ正しいの?ということに関してこの衛星でも向き合いました。校正・検証です。

カルロスと呼ばれるに至る、何度もの海外出張で衛星データの位置の確からしさを測量しすることをしました。まだ、Google マップとかが使える前の頃の話です。

画質の先鋭度を調べるために、画像の中から明るい場所と暗い場所の境目を探しまくり、自分たちで巨大な白黒のビニールシートを敷いたこともありました。

もちろん、センサ開発に関わった方々の努力によるものが大きいわけですが、二つの光学カメラからはとても綺麗な画像が届けられたと思います。

国際協力

大きく二つありました。

合成開口レーダーPALSARを使って、全球の森林の面積とその変化を調べる共同研究では、世界中の研究者が自分の得意分野を分担して研究を進めていきます。その研究材料となる膨大なデータを処理して準備をするのが私たちの役目でした。

COP3で京都議定書により、温室効果ガス削減の目標が設定され、そもそも二酸化炭素を固定する森林ってどれくらいあるのか、改めて把握するには人工衛星のデータが必要になったのです。

入社当時は、ハードディスクの容量が”ギガ”という単位に驚いたものですが、このときはサーバーの容量が”ペタ”ということになりw 時代が進んだことを感じましたね。

もう一つは2011年のタイとの共同研究です。当時、タイで大きな課題となっていた稲作の管理、観光資源である海岸の侵食、大きな河川の洪水の三つのテーマについて先方の宇宙機関を中心とした共同研究チームが作られました。

共同研究の準備をしながら、東日本大震災に対応したりしてひと段落した2011年5月12日に任期満了でALOSは運用を停止します。

共同研究が進んでいき、7月頃になるとタイの首都バンコクを貫いている、チャオプラヤ川の水量が例年にまして多いということからプロジェクトの中でも対応することになりました。ところが10月頃には様子が一変し、バンコクが直接被災が避けられないことになり、すでに運用を止めたALOSに変わって、飛行機にセンサー(レーダー)を載せてバンコクを観測することになりました。この対応についてはこれだけで二回分くらいの文章になっちゃいそうなのでこれくらいにしますw

災害対応

災害対応はすでにこちらで書いているように、ALOSの大きなミッションでもありました。災害は衛星が人のために役に立つ力を発揮できる機会であることは間違いはありませんし、そうならないといけないと思っています。衛星の出番が少ない世の中が、安心安全な世の中… と考えると複雑な心境ですが、それ以外の使い方も色々あります!

2007年1月22日の種子島  ©JAXA ©Tellus  

初画像も3つのセンサー毎にありました。AVNIR-2はこんな感じで種子島を観測し、ALOSの生まれ故郷(射場)を振り返ったのを覚えています。写真はイメージですw(別の日です)

気になる音楽のコーナー

Thetai / Kulage 

日本人のDJユニットKulage。ソリッドな音とトライバル感が暑い夏にぶち上がり間違いなしです。

では、またまた。

ほぼほぼ地球 たまたま宇宙

(隔週月曜日更新)
人工衛星で観測される地球のデータをあれこれする仕事をしています。見知らぬ人から、カルロス!と声をかけられることがあります。

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